ウィルス感染などにより誘導されるエピゲノム異常と疾患の関わりが示唆されており、分子機構の解明が希求されている。Epstein-Barrウイルスはホスト細胞感染時にエピソームを形成し、ウイルスゲノム自身もホストゲノムDNAもエピゲノム変化を生じる。 その分子機構を明らかにするため、エピソーマル型プラスミドをホスト細胞に導入し、エピソームに対するエピゲノム変化およびその原因候補タンパクの探索を行った。プラスミドは、oriP配列とEBNA1遺伝子、さらにGFP遺伝子と薬剤耐性遺伝子を導入した11kbのエピソーマル型プラスミドEB-Multi GFP(以下EBM)を用いた。GFPタンパクは、薬剤選択下では、高発現状態が維持されたが、薬剤非選択下では様々な発現レベルを示す集団が観察された。エピソームのDNAメチル化状態についてGFP遺伝子領域を含め、パイロシークエンス法を用いて解析し、メチル化の誘導を同定した。 次にEBNA1にFLAGタグを結合したFLAG-EBNA1タンパクを発現した293T細胞に、ビオチンラベルしたEBMプラスミドを導入し、エピソームに結合するタンパクの同定を行った。アビジンビーズによりEBM導入6日後の細胞からビオチンラベルDNAを回収し、これに結合するタンパクを抽出した。抗FLAG抗体を用いたウエスタンブロティング解析により、抽出物中のFLAG-EBNA1タンパクをコントロールとして確認した。銀染色では複数のバンドを認め、LC-MS/MSによるEBM結合タンパクのプロテオミクス解析を行った。同定した候補タンパクのうちp53タンパクについては、ウエスタン法によりEBMプラスミドへの結合が確認された。さらに、shRNAによりp53発現を抑制した細胞では、EBMプラスミドのGFP発現の増大が観察され、p53がEBMプラスミドの発現制御に関与していることが示唆された。
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