研究課題/領域番号 |
15K06927
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研究機関 | 公益財団法人かずさDNA研究所 |
研究代表者 |
長谷川 嘉則 公益財団法人かずさDNA研究所, バイオ研究開発部, 特任研究員 (30387683)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ヒト人工染色体 / 巨大ゲノム領域 / クローニング / トランスファー |
研究実績の概要 |
ゲノム解読の進展に伴い、「制御領域全体を含んだ巨大な遺伝子領域を対象とした発現解析」や「リボソームRNA反復配列(rDNA)のように大きな非コードDNA領域を含む巨大反復配列等の長大なゲノムDNA領域の機能解析」が重要性を増している。しかし、巨大ゲノム領域のクローニングは非常に困難であり、たとえ成功したとしても結果的に多くの時間を費やしてしまう。私は、導入DNAのサイズに制限がないヒト人工染色体(HAC)ベクターとCRISPR/Cas9システムを利用することによって、1. 巨大ゲノム領域のHACベクターへのクローニング、2.巨大ゲノム領域搭載HACベクターの目的細胞へのトランスファーまでを僅か2ヶ月で完了させる方法を確立する。さらに、この方法の有用性を示すために、ヒト巨大ゲノム領域をHACベクターへ搭載後、マウスES細胞へトランスファーを行い、トランスジェニックマウスを作製する。 平成27年度は、制御領域を含んだ総DNA長が数百kb以上に達する目的の遺伝子(Gene of interest, GOI)を、HACベクターへ挿入することまでを目標とした。制御領域を含んだ総DNA長が600kb以上になるGOIを設定して、GOIの両脇でCAS9がターゲット出来る位置にguideRNAプラスミドを作製した。その後、GOIの5'側上流に部位特異的組換えサイトであるSLoxサイトを挿入、GOIの3'側下流に部位特異的組換えサイトであるVLoxサイトを挿入することまで完了した。HACベクターヘGOIのクローニングを進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、制御領域を含んだ総DNA長が数百kb以上に達する目的の遺伝子(Gene of interest, GOI)を、HACベクターへ挿入することまでを目標として、研究計画として以下の6つの工程の完了を目標とした。 1. 制御領域を含んだ総DNA長が数百kb以上になるようなGOIを設定する。2. GOIの両脇でCAS9がターゲット出来る位置にguideRNAプラスミドを作製する。3. CAS9がターゲットして切断する位置の上流と下流に各500bpずつの相同配列でVLoxサイトまたはSLoxサイトを挟んだプラスミドを作製する。両方のプラスミドに薬剤選択遺伝子を搭載する。4. HACベクター保有ヒト細胞における遺伝子発現に適したプロモーターを持つCAS9発現ベクターを作製する。5. HACベクター保有ヒト細胞へ、CAS9プラスミド・guideRNAプラスミド・VLoxサイトプラスミド・SLoxサイトプラスミドをトランスフェクション。6. VCre酵素プラスミドとSCre酵素プラスミドをトランスフェクション。HACベクターヘGOIを挿入する。 このうち、1から5までの工程を完了して、現在工程6の作業中である。おおむね計画通り順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度においてはほぼ予定通り研究の進捗が見られたので、平成28年度の研究計画も当初の予定通りに、GOI搭載HACベクターの作製後にマウスES細胞を含む様々な細胞へトランスファーを行うこととする。 1. 蔗糖密度勾配遠心法を用いて、GOI搭載HACベクターを他の染色体から単離する。2.単離したGOI搭載HACベクターを市販のトランスフェクション試薬を用いて、マウスES細胞を含む様々な細胞へトランスファーを行なう。3.VLoxサイトプラスミドとSLoxサイトプラスミドに搭載した薬剤選択遺伝子で、薬剤選択を行う。4.薬剤耐性クローンについて、PCR・FISH・パルスフィールド電気泳動にてHACベクターおよびGOIの有無、欠失等の構造変化がないか調べる。5.GOI搭載HACベクター保有マウスES細胞からトランスジェニックマウスを作製する。6.上記と平行して、CAS9プラスミド・guideRNAプラスミド・VLoxサイトプラスミド・SLoxサイトプラスミド、およびVCre酵素プラスミドとSCre酵素プラスミドのトランスフェクションの様々な組み合わせとタイミングを調べて、GOI搭載HACベクターのトランスファー後の薬剤耐性クローン数が多い条件を検討する。 上記の工程の順に研究を進める。
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