研究課題/領域番号 |
15K06929
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤田 剛 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (80302595)
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研究分担者 |
東 淳樹 岩手大学, 農学部, 講師 (10322968)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 高次捕食者 / 生息地評価 / 分布北限 / 地理的差異 / 猛禽 / サシバ / ノスリ |
研究実績の概要 |
里山景観の高次捕食者サシバを対象に、その分布境界に位置する東北北部において、景観構造に加え、同じ捕食者である他の猛禽類や食物の分布という生態学的要因も含めた、サシバの分布制限を説明する統計モデルの作成した。具体的には、東北北部と関東北部を対象に、猛禽類サシバとノスリの主要な食物となるネズミ類の生息密度や空間分布を明らかにするための調査を実施するとともに、協力者よりサシバの繁殖期データ、他の主要な食物であるカエル類のデータ収集も行い、これらを統合した解析を行った。
1. 野外調査: ネズミ類の分布調査を、青森県弘前 (7月)、岩手県盛岡 (4-7月)と花巻 (5-6月)、栃木県市貝 (6月) で行った。2. 既存データ収集と全データ解析: サシバ繁殖時期の観察データや、ネズミ類以外の主要な食物になる生物としてカエルとバッタ類の発生状況データを、協力者から収集した。1の野外データを中心に、これら協力者から収集したデータも合わせ、サシバの主要な食物になる生物の分布や発生消長の解析を行った。3. 学会発表:以上の調査と解析で得た成果をまとめ、日本鳥学会2017年度大会で「里山に生息する猛禽サシバの繁殖タイミングと餌動物量の緯度勾配」というタイトルで発表した。4. 論文作成: 得られた野外データと協力者から提供されたデータの解析結果を論文にまとめる作業を進めた。
これまで3年間のデータ収集と解析から以下のことがわかった。1. 分布北限付近のサシバの生息地では、他の猛禽ノスリも同所的に高密度で生息している。2. 分布北限サシバの繁殖期は、分布中心と比べて、同じかやや早い傾向がある。3. 分布北限では、これまで主要食物とされてきたカエルの発生が遅く、サシバの繁殖期のカエル密度は非常に低い。4. 一方、ハタネズミの生息密度が分布北限で高く、分布中心より数倍から10倍以上の密度で生息する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の実施計画のうち、1. サシバの主要餌生物の可能性が高いネズミ類の生息密度と分布調査を、サシバの分布北限の岩手県花巻と、そのすぐ北側に位置する盛岡、そして分布中心にあたる栃木県市貝を中心に集中的に実施できた。また、補足データとして、分布中心にあたる弘前と分布北限からさらに北側にあたる青森県弘前でも同様の調査を実施した。これらネズミ類の分布調査が確実にできる太平洋側の地域を優先することにし、当初予定に含まれていた日本海側分布北限の野外調査は断念した。2. 得られたデータのGISの統合とそれにもとづくデータ解析、4. まとめ、5. 成果発表のうち、5の成果発表は学会発表は行えたものの、論文作成と投稿が遅れている。これは、夏まで野外調査に想定以上の時間がかかったこと、秋から冬にかけ、協力者からのデータ収集とその基礎解析に想定以上の時間を費やしたことによる。いずれも、本研究プロジェクトの主目的である、分布北限周辺でのサシバの生息地評価モデルの構築上、 重要なデータである。
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今後の研究の推進方策 |
3年間で得られたデータと解析結果を基に、論文を2編、できるだけ早く発表することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年度に収集した野外調査の不足を補う調査を実施するため。限られた人員で調査を行なったため、分布北限付近のサシバの餌生物であるネズミ類の分布調査が、調査地によって一時期だけ足りない形になった。その季節の調査を実施するため。
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