研究課題/領域番号 |
15K06932
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
斉藤 英俊 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (00294546)
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研究分担者 |
河合 幸一郎 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (30195028)
長澤 和也 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (40416029)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 釣り餌 / 外来種 / ヒッチハイカー種 / 寄生種 |
研究実績の概要 |
本研究では、釣餌輸入にともなう非意図的輸入種および寄生種の日本国内への侵入状況を明らかにするために、以下の項目について調査した。 1)ヒッチハイカー種および寄生種の出現リストの作成:小売店から輸入釣り餌動物として、2016年に新たな輸入防疫制度の申請対象となったテナガエビ類の流通状況を、2016年-2017年に神奈川県、愛知県、大阪府、広島県の釣具店で調査した。新たな輸入防疫制度施行前は,中国から輸入された外来種チュウゴクスジエビ(旧和名:カラテナガエビ)が優占したが、2016年7月の輸入防疫施行後は、国内産地から供給された在来種スジエビに置き換わっていた。しかし、広島県や愛知県では施行後もチュウゴクスジエビが含まれており、国内産地の一つである岡山県で採集されたことから国内に定着した本種が釣り餌として流通していることが判明した。非意図的に混入する水生動物として、魚類のモツゴ、ヨコシマドンコ、クロヨシノボリ、ヌマチチブおよびチョウセンブナを確認した。また、寄生種としては琵琶湖産シラサエビに寄生性等脚類が付着していた。 2)ヒッチハイカー種および寄生種の野外への侵入状況の解明 a) 外来種チュウゴクスジエビおよび在来種スジエビの分布状況について:岡山県内の農業水路20地点で調査をおこなったところ、チュウゴクスジエビは5地点、スジエビは15地点で採集された。両種が共に出現していた2地点では、各種が単独で生息している地点と比較して両種の生息数が低いことが判明した。 b) テナガエビ類および寄生種の野外分布調査(全国の主要河川):日本各地の主要河川におけるテナガエビ類および寄生種の野外への侵入状況を明らかにするために、関東、東海、北陸、関西、および中国地方の河川で野外分布調査をおこなった。その結果、琵琶湖周辺域および利根川水系河川においてテナガエビ類に付着する寄生種等脚類を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)ヒッチハイカー種および寄生種の出現リストの作成:輸入対象種に混入するヒッチハイカー種およびそれらを宿主とする寄生種については、計画通り研究が進み、2報の論文(Saito,2017;斉藤ら,2017)を作成した。 2)ヒッチハイカー種および寄生種の野外への侵入状況の解明 a) 外来種チュウゴクスジエビおよび在来種スジエビの分布状況について:岡山県内の農業水路20地点において、両種の分布状況を明らかにし、1報の論文(斉藤,2018)を作成した。 b) テナガエビ類および寄生種の野外分布調査(全国の主要河川):日本各地の主要河川におけるカラテナガエビ類および寄生種の生息状況を明らかにするために、調査したとこと、これまで報告例のあった琵琶湖周辺域以外にも利根川水系河川においてテナガエビ類に付着する寄生種等脚類の生息を確認するなどの成果があげられた。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度は、利根川水系河川においてテナガエビ類に対する寄生性等脚類の生態を明らかにするために野外調査を実施し、等脚類の寄生率は夏期を除く季節において外来エビよりも在来エビに対して高い傾向があるという新知見が得られた。H30年度では、この生態特性の普遍性および夏期における寄生率の変動要因を精査するために追加調査をおこなう予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) テナガエビ類に対する等脚類の寄生率は夏期を除き外来エビよりも在来エビに対して高い傾向があるという新知見が得られたが、この現象の普遍性を精査する必要が生じた。H30年度では、テナガエビ類に対する寄生性等脚類の生態特性および夏期における寄生率の変動要因を明らかにするために利根川水系河川をはじめとするいくつかの淡水域で調査をおこなう予定である。 (使用計画) 上記研究計画を遂行するための、旅費および消耗品費として使用する予定である。
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