最終年度に実施した研究の成果:エビノコバンは、淡水性エビ類に寄生する等脚類であり、滋賀県琵琶湖など15都道府県にて生息が報告されているが、その生活史や宿主選択性などに関する生態的特性については不明な点が多い。今年度の調査ではスジエビ類に対するエビノコバンの寄生生態を明らかにするために、東京都利根川水系河川において野外調査を実施した。確認されたエビノコバンの生活史として、スジエビに対する寄生率は5月から低下し、その後7月に上昇した。このことから5月から宿主から離れたエビノコバンは、繁殖活動に入り、孵化した個体がエビ類に付着して寄生生活に入ることが推察された。スジエビの産卵盛期は5月、着底期は6月であることや、スジエビとエビノコバンの体サイズには正の相関があることから、エビノコバンの生活史は、スジエビの成長や繁殖時期に適合させている可能性が示唆された。 エビノコバンの宿主選択性についてスジエビ(在来種)とチュウゴクスジエビ(外来種)を比較すると、寄生率は夏期を除く季節においてチュウゴクスジエビよりもスジエビのほうが高いことが判明した。 研究期間全体を通じて実施した研究の成果:釣餌輸入にともなうヒッチハイカー種(非意図的輸入種)および寄生種の日本国内への侵入状況を調査し、以下の成果が得られた。1)ヒッチハイカー種および寄生種の出現リストの作成 小売店における調査の結果、スジエビ類にチョウセンブナを含む外来種や寄生性等脚類エビノコバンが混入していることを確認した。2)ヒッチハイカー種および寄生種の野外への侵入状況の解明 広島県瀬野川において、チュウゴクスジエビは3~7月に抱卵しており、繁殖していることが判明した。また、本種は、福岡県や神奈川県を含む7県で生息が確認された。さらに、東京都の河川においてスジエビ類に寄生するエビノコバンを確認し、上述したようなそ寄生生態が明らかとなった。
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