研究課題/領域番号 |
15K06933
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
伊東 明 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (40274344)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 外来種 / 保全 / 進化 / 植物 / 雑種 / タンポポ |
研究実績の概要 |
1.RADseqによる遺伝子解析を予備的に行ったが、期待していた結果は得られなかった。そのため、当初の予定に戻り、AFLPとMS-AFLPを用いたエピジェネティック変異の解析を実施した。沖縄(石垣市)、大阪(大阪市)、北海道(江別市)の3地域から採取したセイヨウタンポポの種子を15~20℃の低温と30℃の高温で7カ月栽培し、種子を採取した。採取した種子を発芽させて20℃で3カ月栽培し、各個体の葉からDNAを抽出した。得られたDNAを用いてAFLPとMS-AFLPを実施した。AFLPで得られた遺伝的変異に基づいて種座標分析とクラスター解析を行った結果、沖縄、大阪、江別には遺伝的に異なるセイヨウタンポポ個体が生育していること、同じ個体が無融合生殖で生産した種子の間には、栽培温度を変えても遺伝的変異はほとんど生じないことがわかった。一方、遺伝的変異に加えてエピジェネティック変異も含むMS-AFLPのデータを用いて同様の解析を行った結果、同一個体から採取した種子からも異なる変異を持つ個体が生ずることがわかった。また、MS-AFLPの個体間変異は、高温で栽培した個体が生産した種子間で大きくなる傾向があり、高温ストレスによってエピジェネティックな変異が助長された可能性がある。これらの結果は、異なる環境で育ったセイヨウタンポポに生じたエピジェネティック変異が次世代の種子にも引き継がれていることを示唆する。 2.これまで在来2倍体タンポポが少なく雑種タンポポが形成されている可能性が低いと考えてきた北海道において、共同研究者が、新たに形成された雑種の可能性がある個体を見出した。これにより、本研究での北海道の位置づけ(交雑相手のいない地域)を修正する必要があるかもしれない。 3.オーストラリアでのサンプル採取を予定していたが、調査許可と出張スケジュールの関係で実施できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.AFLP解析に代えて、RADseq法を予備的を実施したが、十分な結果が得られなかった。当初予定していたAFLPとMS-AFLP解析を行い一定の成果が得られたが、より詳細なデータを得るためには、実験方法を再検討して、RADseqを再度実施するとともに、MS-RADseqによるエピジェネティック変異解析も行う必要がある。 2.オーストラリアでのサンプル採取ができなかったため、今のところ日本国外のサンプルが得られていない。オーストラリアのセイヨウタンポポ生育に関する現地情報はすでに収集できているため、今後、採取許可を得てサンプル採取を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を1年間延長し、以下の項目を実施する。 1.2018年にオーストラリアの緯度の異なる集団からセイヨウタンポポの果実を採取する。 2.実験条件を再検討してRADseqとMS-RADseqを再度試みる。これらの方法を用いて日本とオーストラリアのサンプルの遺伝的変異とエピジェネティック変異を比較する。これらの新しい手法による解析が困難な場合は、当初の計画通りにAFLPとMS-AFLPで解析を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)本年度は、オーストラリアでのサンプル採取が出来なかったため、必要な経費(旅費、消耗品費)を使用しなかった。また、新しい分析手法であるRADseq、MS-RADseqの手法が確立できず、これらの分析を次年度に実施することとしたため、外注費(その他の経費)を使用しなかった。RADseq、MS-RADseqの代わりにAFLP、MS-AFLP分析を大学共通機器を利用して実施したが、その利用料の支払いは次年度になる。 (使用計画)オーストラリアでのサンプル採取を行うため、調査旅費(約40万円)を使用する予定である。H29年度に行ったAFLP、MS-AFLPの機器利用代金である約40万円をH30年度に支払う予定である。また、RADseq、MS-RADseqに必要な試薬購入と分析の外注に計約120万円を支出予定である。
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