研究課題
シルビアシジミとヒメシルビアシジミを生息地から採集し、DNA抽出を行った。大阪府の生息地で採集したシルビアシジミから抽出した全DNAを用いて次世代シークエンサーによる解析を行い、得られたデータからマイクロサテライトを含む配列の探索を行った。その結果、多数のマイクロサテライトを含む領域が確認された。さらに、解析に有効な100bp前後の短い領域を挟むプライマーの候補を抽出した。引き続き、プライマーの有効性の確認を行う予定である。シルビアシジミについては、大阪府、鳥取県などで採集を行い、別途入手した神奈川県石川県などのサンプルと合わせてDNA抽出とPCRによる増幅を行った。ミトコンドリアDNA、核DNAの配列を比較した。その結果、ミトコンドリアDNAの配列は石川県産個体群で固有のハプロタイプが認められ、隔離された個体群である可能性が示唆された。核DNAの配列については、関東地方の個体群と共通のハプロタイプとなった。石川県産個体群から、Wolbachiaの感染は認められなかった。神奈川県産個体群については、関東地方で見られる遺伝型が認められたが、同地で存続していた個体群なのか、他地域から導入されたものなのかは判然としなかった。休眠性については、恒温器を用いて20℃の様々な日長条件下で卵から成虫の飼育実験を行った。日本での分布の北限である石川県産個体群と大阪府個体群を比較した結果、臨界日長が約1時間20分異なることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
次世代シークエンサーの解析結果が順調で、多くのマイクロサテライトマーカーの候補となる配列が発見され、プライマー候補が選択できた。野外調査についても、これまで解析が不十分な神奈川県、鳥取県、石川県などのサンプルを得ることができた。
今後は、得られたプライマーの有効性の確認を行い、適当な数のプライマーセットが選択された場合は実際の各地の個体群で解析を始める予定である。日本各地の生息地について、調査が不十分な場所については、引き続きサンプリングを行う。個体数が比較的安定しているヒメシルビアシジミについても比較のために調査を行う。
今年度はマイクロサテライトマーカーの開発を中心に行い、プライマーや実際の個体ごとの解析に使用する試薬等を購入しなかったため。
2016年度は、前年度に開発したマーカーをもとにプライマーや試薬を購入し、個体別の解析を進める。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 2件、 査読あり 7件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (13件) (うち招待講演 1件) 図書 (4件)
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