研究実績の概要 |
植物の根からは多数の放線菌が分離されるが、分離できているのはそのほんの一部にすぎない。そこで、今までに分離培養できていない放線菌群を分離し資源として活用するために、植物培養細胞 Nicotiana tabacum L. BY-2を用いた植物モデル系による分離法を開発した。 本方法を用いて1種の植物根より細胞添加および無添加で分離した植物内生放線菌121 株を 16S rRNA 遺伝子部分塩基配列解析により分類すると、9属35種に分類された。そのうち15種(約50%)は細胞添加培地でのみ分離され、植物細胞との共培養により生育が促進され分離できた可能性が高いと考えられる。分離株 Micromonospora sp. KV-964 は細胞添加培地でのみ生育し、植物細胞の添加あるいは植物細胞培養液上清の培地への50%添加により生育が確認されたが、その生育因子の特定に至らなかった。しかし、Micromonospora sp. KV-964 は系統的には新種の可能性が高く、植物細胞添加培地による分離が分類学的に新規な微生物の培養の可能にしたといえる。 次に、植物培養細胞 Nicotiana tabacum L. BY-2に加えて Oryza sativa C5928 Oc を用い2種の植物の根から植物内生放線菌を分離した。現在その分離株についての詳細は解析中であるが、分離時にいずれの植物培養細胞添加培地でも無添加より生育が良好で、また、植物細胞により生育促進する株が複数得られている。2種の植物培養細胞添加および無添加培地の分離株のうちランダムに選択した各々 18, 17 および 15株の16S rRNA 遺伝子部分塩基配列解析から、細胞添加培地からのみ希少放線菌 (Streptomyces 属以外の放線菌)が得られており、今までに分離できなかった未利用な放線菌の分離に成功したと考えている。
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