減数分裂は動植物の遺伝情報を次世代へ伝達する配偶子を形成する重要な過程である。第一減数分裂期において、殆どの染色体は相同なパートナーを持ちシナプトネマ複合体を介した相同対合を行う。残りの非対合染色体は、非対合サイレンシングによってヘテロクロマチン化される。非対合サイレンシングは性染色体の転写制御に関与しており、異数体の配偶子の形成阻害機構、トランスポゾンやウイルスのような外来的 DNA に対する防御機構としての機能も推測されている。非対合サイレンシングは Argonaute 蛋白を用いる内在性の RNAi 機構によって調節されていることが、幾つかの生物において知られている。 線虫 C. elegans においては、CSR-1 および類似した Argonaute 蛋白が小分子 RNA と一緒に標的 RNA を切断する Slicer 活性を示すことを筆者は見つけた。これらの Argonaute 蛋白は非対合サイレンシングを調節するのみならず、正確なホモロジーでのシナプトネマ複合体の形成を指示することによって減数分裂期染色体の相同対合に関与する。COH-3/4 はコヒーシンの減数分裂期特異的サブユニットであり、シナプトネマ複合体の側部軸の形成に必須であることが知られている。筆者は、COH-3/4 は非対合サイレンシングにも必要であることを見つけた。対照的に、ヘテロクロマチンに多いジメチル化ヒストンの結合蛋白として単離した CEC-5 は主として非対合サイレンシングに関与している。クロマチン免疫沈降法を用いた実験では、CSR-1 は COH-3/4 と類似した分布を示し、ジメチル化ヒストンとも部分的に重なった分布を示すことが観察された。内在性の RNAi 機構は、減数分裂期染色体の非対合サイレンシングのみならず相同対合に重要な位置情報を提供するというモデルを得た。
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