研究課題
蛋白質合成(翻訳)の滞りの解消機構は生物種によって異なる。ミトコンドリアの翻訳系では,2つの翻訳停滞解消因子ICT1及びC12orf65蛋白質が必須であることを示してきたが,どのような翻訳停滞状態が生じ,それに対し2つの因子がどのように役割分担し機能しているのかは未知である。一方,ヒトではC12orf65遺伝子に変異が起こると,その位置により病態の異なるミトコンドリア病を引き起こす。本研究の目的は,①リボソームプロファイリングによりICT1あるいはC12orf65依存的に解消される翻訳停滞解消状態(配列)を明らかすることで,「翻訳停滞解消機構」の全容を示し,②CRISPR/Casゲノム編集法によりC12orf65の欠損領域が異なるマウスを複数作製し解析することで,解消機構不全によるミトコンドリア病の病態発現機構を解明することである。今年度は,前年度に得られたC12orf65遺伝子が欠損しているヘテロ型マウス,オス2匹およびス2匹を交配させ,ホモ型マウスの作製を行った(ヘテロ型では野生型と異なる表現系は見られなかった)。その結果,得られた産仔をgenomic typingしたところ,ホモ型を得ることができなかった。現在,ホモ型は胎生致死である可能性を視野に入れ,胎齢10.5~14.5日目の胎仔をすべて取り出してC12orf65遺伝子の欠損状態を確認し,ホモ型が存在すればその細胞を解析する予定である。また,より軽度な症状を示すと考えられる配列の欠損のさせ方をしたマウスを作製することを検討している。リボソームプロファイリングの実験に関しては,抗生物質によるミトコンドリア翻訳系での安定した停滞状態を引き起こすことができず,抗生物質の種類などを変更して条件を検討している。
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J Biol Chem
巻: 292 ページ: 10574-10585
10.1074/jbc.M117.785592
http://molbio.chem-bio.st.gunma-u.ac.jp