細胞核内の染色体DNAは染色体軸を形成するタンパク質である核マトリクスに固定化されており、ループ構造を形成することによって超らせん等の高次構造が導入されている。DNAの二重らせんを過剰に巻くことにより正の超らせんが導入され、DNAの二重らせんを巻き戻すことにより負の超らせんが導入される。特に、負の超らせんは開裂構造、十字構造、Z型構造などの非B型DNA二次構造(非B型構造)を誘導することが知られており、転写やDNA複製などのDNA代謝反応の制御に関与することが示唆されている。今年度も引き続き、開発した微細流路装置、磁気ピンセット装置、蛍光顕微鏡装置で構成する1分子蛍光観察装置およびRPA-YFPによる1本鎖DNA可視化技術を用いて実験を行った。直鎖状DNAに任意の超らせん密度を任意のタイミングで制御可能な磁気ピンセット装置を用いて、蛍光顕微鏡視野内にて直鎖状DNAに負の超らせんを導入することにより生じた局所的な開裂について1本鎖DNA領域を可視化した。直鎖状DNAはλDNAとSimian Virus 40 (SV40) のDNA複製起点を含むλDNA (SV40ori-λDNA) を用いた。λDNA及びSV40ori-λDNAの局所的な開裂はRPA-YFPによる1本鎖DNA領域の可視化後、YOYO-1による2本鎖DNA領域を可視化することにより観察した。負の超らせん密度を増加したときのλDNA及びSV40ori-λDNAの局所的な開裂の頻度を解析し、負の超らせん歪みによる局所的な開裂の特性を明らかにし、λDNA及びSV40ori-λDNAの負の超らせん歪みによる局所的な開裂がλ複製起点及びSV40 複製起点内のAT rich領域に誘導されること、高い超らせん密度が複製起点近傍に局所的な開裂を優位に誘導されることを明らかにした。
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