研究課題/領域番号 |
15K06948
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西田 知訓 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (10598436)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | piRNA生合成 / PIWIタンパク質 / ミトコンドリア / 生殖細胞 |
研究実績の概要 |
piRNAは、PIWIタンパク質と相互作用してトランスポゾンを抑制する。piRNA生合成に関与する因子が、数多く同定されているが、それら因子の詳細な生化学的機能は未だ明らかになっていない。カイコの卵巣生殖細胞由来の培養細胞BmN4を用いて解析を進めた。以前に行ったBmSpn-Eに結合するRNAとBmQinに結合するRNAをCLIP法により生成したライブラリーをバイオインフォマティック解析を行ったがバックグランドが高く解析できなかった。そのため、免疫沈降物の量を増やし、再度実験を試みてバイオインフォマティック解析を進めている。BmQinのNuageへの局在にZinc fingerドメインとTUDORドメインの両方必要なことが判ってきた。現在、piRNA生合成へのこれら2つのドメインの必要性を明らかにしようとしている段階である。 以前から、Nuageとミトコンドリアに関連性があることが報告されていた。しかしながら、どのようにミトコンドリア上でpiRNA生合成が生じているのかは、よく判っていなかった。PIWIタンパク質はミトコンドリア上でPAPIと結合していることが報告された。私はBmPAPI抗体を作製し、PAPI複合体を精製したところ、予想通りSiwiとの結合が見られた。さらに、ミトコンドリア因子でpiRNA生合成に関与するヌクレアーゼであるBmZucchini (BmZuc)もこの複合体に含まれることが判った。この複合体内のSiwiは成熟型piRNAと15-20%程度した結合していないことを見出した。さらに、BmZucをノックダウンするとPAPI-Siwi複合体にpiRNA中間体が蓄積することを見出した.piRNA生合成の場として、PAPIが重要な足場になっていることが判ってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BmSpn-EとBmQinそれぞれに結合するRNAが綺麗に精製できているため、それぞれに特異的に結合するRNAの種類及び領域を同定できると期待される。また、BmQinがNuageに局在するためにZinc-fingerとTudorドメインが両方とも必要であることも判明した。さらに、BmPAPI抗体で免疫沈降した複合体には、Siwi及びBmZucが含まれることが判った。BmPAPI複合体に含まれるSiwiは、成熟型piRNAとほぼ結合していないことから、piRNAがloadされる前の段階であると考えられる。また、BmZucをノックダウンしたBmN4では、BmPAPI-Siwi複合体にpiRNA中間体が蓄積することを見出した。つまり、PAPI上でpiRNA生合成が生じていることを示唆する新規の結果を得られた。
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今後の研究の推進方策 |
BmSpn-EとBmQinに結合するRNAを同定した結果を元にプローブを設計し、nothern blotを行うことにより、さらにどの程度の長さのRNAを保有しているのかを明らかにすることができる。また、BmQinが局在するためには、Zinc-fingerとTudorドメインが両方とも必要であることが判明したが、これらドメインがpiRNA生合成に両方とも必要であるのかは判っていない。そのため、内在のBmQinをノックダウンがtransgeneを発現させ、piRNA生合成がrescueされるのかを明らかにする。そして、PAPI上でpiRNA生合成経路が行われていることが判ってきたが、どのように反応が進むのかはまだよく判っていないため、in vitro assay系を構築し、詳細な生成経路を明らかにして行きたい。
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