DNAメチル化の正確な制御は、哺乳類の正常胚発生に必須である。DNAメチル化酵素には、新規メチル化型のDnmt3aとDnmt3b、維持型のDnmt1がある。Dnmt1は、精製した無修飾DNAをメチル化できるが、細胞核で新規メチル化酵素としてはたらくか不明である。私たちは、H27年度までに、Dnmt1のみを発現する未分化なマウスES細胞では、Dnmt1は新規メチル化活性を示さず、分化依存的に活性領域からメチル化することを見出した。H28-29年度は、Dnmt1の新規メチル化制御機構を解析した。クロマチンの活性領域は、エピジェネティックに制御され、胚発生過程で変化する。そこで、クロマチン緩和を人為的に誘導するシグナルリガンドや不活性型クロマチン制御因子の抑制剤でES細胞を処理した。結果、いずれもDnmt1による新規DNAメチル化を促進した。Tet酵素は、メチル化シトシン(5mC)を5-ヒドロキシメチルシトシン(5hmC)に変換するが、その働きもクロマチンにより負に制御されている。よって、Tet発現細胞では、Dnmt1による5mCは常に5hmCとして検出された。また、維持メチル化に必要なDnmt1ドメインは、新規メチル化には不要であった。また、ES細胞を分化誘導しDnmt1の新規メチル化活性が現われる分化段階を遺伝子発現で解析すると、原条形成や始原生殖細胞マーカーを高発現する状態を経過した。よって、Dnmt1の新規メチル化活性は、細胞分化をある程度制御でき、リプログラミング時期に現われることが分かった。今後、正常胚発生におけるDnmt1の新規メチル化活性の機能を明らかにする。
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