研究課題/領域番号 |
15K06952
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
渡邉 和秀 国立研究開発法人理化学研究所, ライフサイエンス技術基盤研究センター, 上級研究員 (40749397)
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研究分担者 |
須田 年生 熊本大学, 国際先端医学研究機構, 卓越教授 (60118453) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | EMT / MET / Transcriptomics / Epigenomics / Systems biology |
研究実績の概要 |
本研究は乳腺上皮細胞において上皮間葉移行(EMT)と間葉上皮以降(MET)を制御する複数の転写因子群の構築するネットワークが、細胞状態を規定する遺伝子発現やクロマチン状態の制御を行うメカニズムの探索を目的とする。正常乳腺上皮細胞MCF10A細胞において重要なEMT関連転写因子であるZEB1遺伝子をCRISPR/Cas9によるゲノム編集を用いてノックアウト株を作成した。また、ZEB1の誘導発現系も構築した。これらのモデルを利用し、平成27年度報告書では不十分であったクロマチン解析実験(ATAC-seq、ChIP-seq)を重点的に行い、ゲノム規模でEMT前後での遺伝子発現の変化との相関を解析した。その結果、EMT誘導の前後で発言が変化する遺伝子群の中にはクロマチン状態の変化を伴うものと伴わないものが存在し、主なEMT関連遺伝子は前者であることが判明した。更にEMTにおける上皮系(E)遺伝子と間葉系(M)遺伝子の相反的変化およびEMTの不可逆性には、ZEB1-TGFベータのポジティブフィードバック制御が重要な役割を果たしていることが判明した。実証実験では、ZEB1遺伝子の破壊や阻害薬によるTGFベータ経路の阻害により、E遺伝子とM遺伝子の相反的変化が起こらなくなり、またEMTを起こした細胞がEMTの表現型を維持できなくなることを証明した。これらの知見をもとにUCIとの共同研究で数理モデルを構築することにも成功した。 以上の知見は日本分子生物学会総会(2016 Nov-Dec、横浜)およびAmerican Society of Cell Biology総会(2016 Dec, San Francisco)で発表し、現在論文執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように、遺伝子発現やクロマチン解析をゲノムワイドに行い、統合的な解析を行うことにより新たな知見を得ることができた。本研究の大きな目的の一つは達せられた。
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今後の研究の推進方策 |
上述の知見を更に進めて、EMTに関連するエンハンサー領域の同定と機能解析を行っていく予定である。また、近年進展しているテクノロジーである一細胞解析とゲノム編集を利用し、複雑なEMT/METネットワークを網羅的に解析する方法を確立していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
差額は発注した物品の納入が年度内に行われなかったため生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の物品費として費用する。
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