研究課題/領域番号 |
15K06953
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
古久保 哲朗 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 教授 (10271587)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 転写調節 / 転写因子 / 局所翻訳制御 / SAGA / 出芽酵母 / TFIID / TAF / TBP |
研究実績の概要 |
基本転写因子TFIIDはSAGAとともにコアプロモーター上で働き、TBP-DNA相互作用を制御することによって転写の活性化を行う。最近我々は、同一のプロモーターからTFIIDまたはSAGAによって転写されるCLN2 mRNA(以下CLN2 mRNA[TFIID] or [SAGA])が機能の異なる二種類のCln2pに翻訳されること、特にCLN2 mRNA[SAGA]はSsd1とMpt5による局所翻訳制御を受ける可能性を強く示唆する結果を得た。そこで本研究では、主に遺伝学的な解析を行い、①taf1ΔTAND変異とΔRAM変異が示す合成致死性はssd1-8A変異(Cbk1によるリン酸化が不可能な変異体)によりミミックできること、②taf1ΔTAND変異と上記[ΔRAM or ssd1-8A]変異の合成致死性は、いずれもΔmpt5変異により抑圧できることを明らかにした。以上の結果は、RAMシグナル経路においてMpt5がSsd1の下流側で機能することを強く示唆している。また③Cbk1- S745F(constitutive active form)の構成的発現により、野生型Ssd1の存在下におけるΔRAM単独変異の致死性を弱いながら回復できること、④ΔRAM SSD1 cbk1-S745F株の微弱な生育は、数回~数十回の分裂を経て通常の生育速度へとepigenetic & stochasticに変化することを見出した。現在我々は、Ssd1, Mpt5が標的RNAとともに液滴オルガネラを形成し、RAMはその溶解を誘起すると考えており、今後は当該モデルの検証に取り組む予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回新たに「ΔRAM SSD1 cbk1-S745F株の微弱な生育は、数回~数十回の分裂を経て通常の生育速度へとepigenetic & stochasticに変化する」という興味深い現象を見出したが、本現象には「液滴オルガネラ(Pボディ)の形成と溶解」という新規の生命現象が関与する可能性が高いと考えられることから。
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今後の研究の推進方策 |
Ssd1, Mpt5はPボディの構成成分であり、Cbk1[RAM]によりリン酸化されたSsd1はPボディから解離し、その結果、標的mRNAの翻訳が可能になるものと考えられる。現在我々は、本研究において得られた遺伝学的な知見を全て矛盾無く説明するためには、Ssd1, Mpt5を含む液滴オルガネラ(Pボディ)の構築とCbk1[RAM]によるその溶解という新たな分子機構を想定する必要があると考えており、今後は当該モデルの検証に取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
TAND欠失変異とRAM欠損変異間の合成致死性の原因として当初考えていた分子モデルが必ずしも正しくないことが判明し、計画の変更が必要となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
新たな分子モデルの検証に取り組むとともに、CLN2 mRNA[TFIID]及びCLN2 mRNA[SAGA]の細胞内局在と、Cln2pが有する二種類の機能との連関については、当初の計画通り解析を進める。
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