研究課題/領域番号 |
15K06955
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
橋本 吉民 東京薬科大学, 生命科学部, 助教 (50616761)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | DNA複製フォーク / レプリソーム / アフリカツメガエル卵無細胞系 / Cdc45 / GINS / 複製チェックポイント / CDK / PLK1 |
研究実績の概要 |
停止した複製フォークは、最初複製再開可能な状態で維持されるが、停止が長引くと再開不可能な状態へと変化(フォーク崩壊)することが知られている。しかし、この過程においてレプリソームがどのような制御を受けているのかほとんど明らかになっていない。本研究では、停止した複製フォークからレプリソームが解離する過程についてアフリカツメガエル卵無細胞系を用いて解析を行った。 間期卵抽出液中で形成した複製フォークをアフィディコリンにより停止させた状態で分裂期卵抽出液を添加すると、複製終了しないにも関わらずCdc45やGINSなどのレプリソーム因子がクロマチンから解離することを見出した。このときコンデンシンサブユニットXCAP-Eはクロマチン結合しておらず、またヒストンH3 Ser10のリン酸化も起きていなかったことから、複製チェックポイント活性により分裂期への誘導は阻害されていたと考えられる。一方、カフェインにより複製チェックポイントを不活性化した状態でフォークを停止させた場合は、分裂期抽出液の添加によりXCAP-Eのクロマチン結合やH3 Ser10リン酸化が亢進されたにもかかわらず、レプリソーム因子の解離は抑制された。さらに、各種の阻害剤を用いて分裂期抽出液添加によるレプリソーム解離に必要な因子について検討した結果、CDK、PLK1、プロテアソーム活性が必要であることが分かった。一方、通常の複製終了時におけるレプリソームの解離に必要とされるTopoisomerase IIやCdc48/VCP/p97の活性は不要であった。 これらの結果は、レプリソーム因子の解離が単に染色体凝縮の結果として起きるのではなく、複製終了していないフォークから積極的にレプリソームを解離する新たな仕組みが存在することを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の大きな目標は、複製フォーク崩壊を試験管内で再現し、その過程においてレプリソーム動態を制御する分子機構を明らかにすることである。初年度の研究で、分裂期卵抽出液添加により停止フォークからレプリソーム解離を効率的に起こせることが分かったため、今後、この系を使ってより詳細な分子機構の解明に取り組むことが可能であると考えられる。また最近、複製終了時におけるレプリソーム解離の仕組みの一旦が明らかとなったが、それとは異なる仕組みがフォーク崩壊時のレプリソーム解離には働いていることが本研究の結果から示唆される。
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今後の研究の推進方策 |
分裂期卵抽出液添加による停止フォークからのレプリソーム解離機構について、特にレプリソーム因子の翻訳後修飾とユビキチン/プロテアソーム系の役割に着目して解析を行う。GINSのサブユニットPsf2は、DNA損傷に応じてATM/ATR依存的なリン酸化を受けることが知られているが、その生理的意義は不明である。本研究では、フォーク崩壊への関与の可能性について検討したい。また、RNF4やBRCA1などはフォーク崩壊への関与が示唆されているユビキチンリガーゼであり、これらに対する特異的抗体を作製して卵抽出液からの免疫除去実験を試みる予定である。さらに、フォーク停止状態と崩壊誘導をかけた状態とでクロマチン結合タンパク質の質量分析による比較を行うことにより、レプリソーム解離の分子機構の詳細に迫りたい。
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