DNA複製装置であるレプリソームは、DNA複製終了後や停止した複製フォークが崩壊する際にクロマチンから解離する。複製終了時には、レプリソーム構成因子Mcm7がCullin型ユビキチンリガーゼによってポリユビキチン化され、これをp97複合体が認識してレプリソーム解離を行うことが明らかになっている。一方、停止したフォークではMcm7ポリユビキチン化は起きないことから、フォーク崩壊時のレプリソーム解離には複製終了時とは異なる仕組みが働くと考えられるが、その詳細はほとんど分かっていない。本課題では、アフリカツメガエル卵抽出液を用いてフォーク崩壊とレプリソーム解離を試験管内で再構成し、その分子機構を明らかにすることを目的として研究を行った。 間期卵抽出液中でDNAポリメラーゼ阻害剤であるAphidicolinによりフォークを停止させた状態では、フォークやレプリソームは2時間程度の間は複製再開可能な状態で安定に維持される。このとき分裂期卵抽出液を加えて、細胞周期を強制的に進行させることにより、速やかにレプリソーム解離が起きることを見出した。各種阻害剤やユビキチン変異体を用いた解析から、この分裂期誘導によるレプリソーム解離には、CDK活性、Lys48およびLys63を介したポリユビキチン化、Mre11ヌクレアーゼ活性が必要であることが分かった。一方、複製終了時に必要とされるp97/VCPやCullinユビキチンリガーゼは不必要であった。これらの結果は、染色体上に停止した複製フォークが存在する状態で分裂期へ進行した場合、複製終了時とは異なる新規のレプリソーム解離機構が働くことを示唆している。
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