これまでに引き続き、どのような仕組みによって高等真核生物の複製開始点が染色体DNA上の特定の領域に規定されるのかを明らかにすることを目標に、複製開始点に結合するタンパク質であるORCの解析を進めた。特にG-rich RNA/1本鎖DNA(ssDNA)結合活性を有するORC1サブユニットに着目して研究を進めた。 ヒトや分裂酵母のORCにDNA超らせん誘導活性のあることがすでに報告されている。そして、我々の解析からヒトORC1がその活性を有することが明らかとなっている(未発表データ)。そこで、ORC1のどの領域がその活性を担うかを調べたところ、AAA+ドメインは含まないN末端側領域がDNA超らせん誘導活性を持つことが判明した。この結果は、ORC1のN末端側領域が直接DNAに結合し、さらにDNAに対し何らかの作用を及ぼしている可能性を強く示唆する。 また、G-rich RNA/ssDNA結合活性を有するN末端側領域を除いたORC1(477-861)を含む6量体ORCをバキュロウイルス昆虫細胞発現系によって調製し、この変異ORC6量体においてG-rich RNA/ssDNA結合活性が消失したかどうかをゲルシフト法によって調べた。その結果、予想外にも、ORC1のN末端側領域を欠除したにも関わらず、変異ORC6量体にはG-rich RNA/ssDNA結合活性が残存することが判明した。しかし、変異ORC6量体のもつ活性は、野生型ORCよりは明らかに低く、さらにゲルシフト法での結果において、野性型には見られないバンドシフトが検出された。以上の結果は、ORC1のN末端側領域以外にも、G-rich RNA/ssDNA結合活性を担うドメインが存在することを示す。この新規ドメインを同定するため、今後も継続的な解析が必要であると考えている。
|