哺乳類卵子を包む透明帯は受精時に精子と種選択的に結合し、受精成立に伴い結合能を失う。この機能は種の保存に必須であるが機構はまだ解明されていない。我々はブタおよびウシを研究対象とし、この機構解明に取り組んでいる。ウシ透明帯構成糖タンパク質の一つZP4が固相吸着させた状態で単独で精子結合活性を示すことを我々は平成27年度に見出した。これに基づき、ZP4を人工的に多量体化した場合、精子結合活性を示すかどうかを調べ、平成29年度はビオチン標識ZP4をストレプトアビジンに結合させ多量体化させた場合に精子結合活性を示すことを見出した。ZP4結合精子タンパク質の検索に、このビオチン標識ZP4が利用できると考えられた。ウシZP4のN末端領域は固相吸着させた場合にウシ精子結合活性を示したが、ブタZP4の相当する領域はウシとのアミノ酸配列相同性が高いにもかかわらずウシ精子結合活性を示さなかった。この結果に基づき、両者のアミノ酸配列を入れ替えることにより精子結合部位の特定を進めることができると考えられた。受精成立に伴いZP2のN末端領域が1ヵ所特異的プロセシングを受けることがわかっているが、ZP2のN末端領域の立体構造は不明である。バキュロウイルス-Sf9細胞発現系でZP2のN末端断片を発現させ結晶化条件検討ならびに小角X線散乱測定を行った。結晶はまだ得られておらず、凝集しやすい性質を有することがわかった。それぞれの手法について凝集を抑えるための条件検討が必要であることがわかった。
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