研究課題
難治性疾患であるアミロイド症を引きおこす各種アミロイド線維、特にアルツハイマー病βアミロイド(Aβ)およびβ2-ミクログロブリン(β2-m)アミロイド(透析アミロイド)に焦点を当て、生体内環境を忠実に模倣した試験管内アミロイド線維形成反応系を構築する。これを用いて、生体内のアミロイド線維形成過程での前駆体蛋白質や生体分子等の相互作用を再現して反応機構全体を解明し、治療法の探索に用いることを目的とする。特にβアミロイドでは生理濃度(nM)に近いAβ蛋白質(ペプチド)モノマー濃度で重合反応を行う反応系を構築する。従来の重合反応系ではμMレベルの高濃度のAβ蛋白質を用いていた。より生理的なAβ蛋白質濃度で共存蛋白質等との相互作用を解析することを課題としている。成果:βアミロイド。①高感度型反応系の基礎構築の更なる検討を行った。アミロイド線維形成の素過程としては、重合核形成、アミロイド線維伸長および二次核形成がある。本年度は、アミロイド線維伸長を検出する反応系の更なる改良を行い、測定感度をさらに向上した。②共存蛋白質であるアポリポ蛋白質Eとクラスタリンがβアミロイド線維形成に及ぼす効果を、既に開発した核形成反応系等を応用して解析した。その結果、βアミロイド線維形成の初期過程を抑制することが判明した。β2-mアミロイド。線維の伸長反応・核形成反応に当たって、前駆体蛋白質のβ2-mの立体構造が部分変性する必要があることが示されている。従来の閉鎖型アミロイド重合反応系では、臨界ミセル濃度程度の界面活性剤を添加してβ2-mを部分変性させ、アミロイド線維を伸長させている。この条件の閉鎖型反応系で重合核形成反応を試みたが、核形成を誘起する生体因子を探索することは難しいと推定された。また、生理的条件下で線維伸長を観測できる反応系の構築の必要性が示唆された。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Acta Neuropathol Commun
巻: 7(1):12 ページ: -
10.1186/s40478-019-0662-1