研究課題
胆汁酸トランスポーターNTCPはNa+濃度勾配を利用して胆汁酸の腸肝循環を駆動する膜タンパク質である。B型肝炎ウイルスは侵入経路としてNTCPを用いることが知られている。またNTCPはプロドラッグキャリアとして機能することもわかっており、NTCPの創薬標的としての重要性は高い。本研究では、NTCPの結晶構造を解明し、構造に基づく薬剤設計に欠かせない立体構造情報を得ることを目指した。一般に膜タンパク質は、発現・精製が困難で、親水性ドメインが小さいため結晶化が難しく、たとえ結晶が得られても結晶性が悪い、という理由から結晶構造解析の難度が高い。こうした課題を克服するために本研究では、(1)熱安定性とゲル濾過分析での単分散性が良好な変異体コンストラクトを作製、(2)融合蛋白質を付加したNTCPを作製、(3)立体構造認識抗体との複合体で結晶化する、という三つの方策を試みた。野生型NTCPは精製途中に凝集を起こすほど不安定であったが、点変異を導入することで、野生型より熱安定性が高く単分散性も良好な安定化変異体の取得に成功した。また当該変異体タンパク質の精製法も確立した。FLAGタグを用いた精製工程やPNGaseF処理という手順を加えることで、結晶化を行うのに十分な純度の最終精製サンプルが得られるようになった。さらに当該変異体タンパク質に対する立体構造認識抗体6クローンの取得にも成功した。抗体の結合により、NTCP結晶化サンプルの親水性ドメインを拡大するだけでなく構造のゆらぎを固定できたと考えられる。現在、ことNTCP安定化変異体精製標品と立体構造認識抗体Fabフラグメントを用いて、結晶化条件を探索中である。
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Protein Science
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10.1002/pro.3407
Acta Crystallographica Section F Structural Biology Communications
巻: 73 ページ: 423~430
10.1107/S2053230X17008500