研究実績の概要 |
フロリゲンは花が咲く時期を決定している花成ホルモンであり、2007年に我々を含む日本とドイツのグループにより初めて分子実体が同定された。さらに我々は生化学的なアプローチによりフロリゲンの細胞内受容体を発見し、フロリゲンと受容体が茎頂細胞の核内で「フロリゲン活性化複合体」と呼ばれる転写複合体を形成することを明らかにし、その詳細な分子構造も解明した(Taoka, Ohki, Tsuji et al. Nature 2011)。この受容体はフロリゲン経路において開花抑制時にも中心的な役割を担っていることが現在判明しつつあり、従来の開花制御機構の概念を新たに組み直す必要が出てきている。本研究では構造解析の手法を駆使し、世界に先駆け、この新規受容体を含めたイネフロリゲン複合体の立体構造解析を行い、開花の分子制御機構の全貌を解明する事を目的としている。 本年度はフロリゲンと花成リプレッサーによる花成制御の分子機構の解明を進めた。特に未だ未知の花成リプレッサーによる抑制機構を調べるためX線結晶構造を行い、これまで低分解能でしか得られていなかったリプレッサー-受容体複合体(抑制複合体)の高分解能構造を決定する事に成功した。既に構造が得られていたフロリゲン-受容体からなる活性化複合体と、今回得られた抑制複合体との構造比較から、開花促進・抑制の切り替え機構モデルを作成した。また機能解析の過程で、フロリゲンタンパク質表面上に存在し、開花機能に重要である事が知られているポケットに結合する生理活性分子を発見した。現在、その分子の解析を進めている。
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