研究課題/領域番号 |
15K06971
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
東浦 彰史 大阪大学, たんぱく質研究所, 助教 (90598129)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 構造生物学 |
研究実績の概要 |
分子量が10億にも及ぶPBCV1のX線結晶構造解析とコヒーレントX線イメージングのための試料の大量調製はこれまでの研究により確立されており、必要な量は十分量調製できている。 X線結晶構造解析のための結晶化を妨げる要因であると考えているPBCV1表面のファイバー状構造体の除去を目指した実験を実施しているが成果は得られていない。PBCV1の結晶構造解析を目指した周辺技術開発を平行して実施した。巨大な分子の結晶はその回折が弱い可能性があるため、既に結晶の得られている他のウイルスをモデルとして周辺技術の開発と整備を行った。モデル結晶を用い、より高分解能のX線回折データを効率よく取得するための放射光施設でのデータ収集法の改良とビームライン整備を行った。さらに、放射光を利用した回折実験では放射線損傷を避けるための結晶の凍結が一般的であるが、ウイルスの様な巨大分子の結晶は周辺環境の変化に脆弱である可能性が考えられるため、結晶の環境変化を極力避けることのできる結晶凍結の手法である高圧凍結法の改良と整備を行った。 コヒーレントX線イメージングでは既に取得済みであった回折イメージの選別を実施し、PBCV1の単粒子由来であると考えられる回折パターンを複数得ることができた。ここで得られた回折イメージの位相回復を行い、低分解能ではあるが妥当な2次元イメージを得ることに成功した。また、より高分解能の回折データ取得を目指した回折実験を他のウイルスをモデルとして実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
X線結晶構造解析とコヒーレントX線イメージングのためのPBCV-1試料の調製は恒常的に実施できており順調である。 X線結晶構造解析のための結晶化は、結晶化を妨げる要因であると考えているPBCV1の表面に存在するファイバー状構造体の除去が当初の予定通りには進んでいない。結晶化に適したサンプル調製が予定通り進んでいないため、結晶化スクリーニングを実施できていない。 また、コヒーレントX線イメージングのためのデータ選別と2次元の位相決定までは予定通り進んでおり、概ね順調である。 以上の理由により、総合的にはやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
X線結晶構造解析とコヒーレントX線イメージングには大量のPBCV1が必要であるため、引き続き大量培養を実施し、常に十分量のサンプルを確保する。 PBCV1の結晶構造解析を目指し、結晶化を妨げる要因であると考えているファイバー状構造体の除去を検討する。各種プロテアーゼなどの酵素処理と結晶化スクリーニングを合わせて実施する。また、ファイバー状構造体の同定も同時に進めていきたいと考えている。PBCV1の結晶が得られた後のX線回折実験を想定し、結晶の高圧凍結法の改良、放射光ビームラインの整備、放射光を用いた回折データ取得法の効率化を平行して進めていく。 コヒーレントX線イメージングでは既に得られている単粒子散乱パターンからの2次元イメージング法の改良と効率化を進め、3次元の構造取得を目指す。また、より高分解能の単粒子回折イメージの取得を目指した回折実験を適宜実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
既存の設備の効率的な利用により、申請時に試料調製と試料の保管用に購入を予定していたインキュベータと振とう機の購入を延期した。また、計画していたデータ取得が遅れており、それに伴いデータ解析のための計算機の選定も遅れたため、年度内の購入を見送った。
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次年度使用額の使用計画 |
X線結晶構造解析とコヒーレントX線イメージングのための試料調製の量を増やす予定であるため、試料調製と保管のためのインキュベータと振とう機の購入を検討している。また、データ取得の目処がたち次第、データ処理用計算機を速やかに選定し、購入を検討する。
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