研究課題/領域番号 |
15K06972
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
田中 良樹 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (10632333)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | タンパク質 / イオン輸送 / 膜タンパク質 / X線結晶構造解析 / 構造生物学 |
研究実績の概要 |
金属イオンは生命活動に必須であり,細胞質の金属イオン濃度は厳密に制御されている.植物細胞においてZn, Fe, Mn, Cdイオンの排出を担い,金属耐性に関わるのがMTPファミリーである.本研究では,高い金属集積能力を有する植物由来のMTPの結晶構造解析と立体構造を利用した機能解析を目指している.大量発現系を構築,結晶化に必要な高純度のサンプル精製系を確立し,LCP法による結晶化を試みた.得られた結晶について放射光施設で回折実験を行ったが,解析可能なデータを得るためには結晶の質・量の改善が必要である.抗体等の結晶化を補助する分子の探索やbicelle法など他の結晶化方法を試して結晶化条件の検討を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
結晶化に必要な量のサンプルを発現させ,高純度に単離する系を確立した.しかし,構造解析可能な結晶の作成には至っていないため,LCP法・bicelle法・HiLiDe法など膜タンパク質結晶化方法を含め,結晶化スクリーニングを繰り返し行っていく.同時に結晶化の補助になる抗体等の結合分子の探索も行い,共結晶化により結晶化を促進する方法も同時に進行させている.
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今後の研究の推進方策 |
大量精製系は完成しているので,結晶化条件の探索を網羅的に行っていく.膜タンパク質用の各種結晶化手法を導入や,結晶化を補助する分子を作成し共結晶化を行う予定である.回折実験は微小結晶からの測定が可能なマイクロフォーカスビームラインSPring-8 BL32XUを用いる.また,状況によってはより強力なX線光源であるX線自由電子レーザーSACLAの利用も検討し,構造決定を目指す. さらに輸送の各状態の構造を決定し,輸送における構造変化を可視化していく.輸送制御や特異性を認識する部位が輸送体に存在すると考えられており,基質の有無や種類を変更し構造解析を行うことで構造機能相関の解明を目標とする.構造に加えて,機能解析を進める.具体的には人工脂質二重膜へ再構成し,イオンに反応する蛍光色素や電気生理学的手法を用いた解析,過剰発現細胞(酵母・植物培養細胞)の重金属感受性の変化を観察する方法などが考えられる.構造情報に基づく解析を行うことで,一塩基多型による輸送基質変化の仕組みなど,輸送メカニズムの解明を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
初期スクリーニングで得られた結晶から期待していた回折像を得られず,予定していたよりも結晶化以前の小規模スクリーニングを行うことが多かったため.
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次年度使用額の使用計画 |
結晶化のための大量のサンプル調製と同時に,結晶化を促進する抗体の作製を行っていくために使用する.
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