研究実績の概要 |
生命活動を維持するためには細胞内の各種代謝産物の濃度を一定の範囲に維持する必要がある。例として、金属イオンは生命活動の為に必須となる一方で,必要以上の濃度では細胞に障害を与える。本研究計画においては、金属イオンを輸送して細胞内の恒常性を維持する膜タンパク質輸送体ファミリーに着目し、それらの構造面からの機能理解を目指して研究を実施してきた。 植物の金属耐性に関わる輸送体とされる多剤排出輸送体MATEに関して、結晶構造解析を行い、Camelina sativa(アマナズナ)由来のMATE構造を2.9オングストローム分解能にて決定し報告した(Yoshiki Tanaka, Shigehiro Iwaki, Tomoya Tsukazaki, 2018 Structure)。MATEファミリーについては、原核生物では複数の生物種で構造が解明されていたが、真核生物では未だ報告数は少ない。今回明らかにした構造では、酸性のアミノ酸側鎖が内側ポケット部分に集中している部分があり、比較的疎水的な化合物を排出する原核MATEとアルミニウムのような陽イオンを排出するとされる植物MATEでは基質結合領域の様相が異なることがわかった。 また、解析目標の一つである亜鉛輸送体ファミリーに関しては,30種ほどの生物種から輸送体の遺伝子を選択してクローニングを行い発現条件の検討を進めた。結晶化を実行可能な質・量を確保できる精製系を構築した。構造解析には予備的な結晶が得ており,結晶を改善させるために特異的結合抗体との複合体を調製して現在も結晶条件の検討を進行中である。構造解析と共に、機能解析の系を構築し、引き続き本研究を発展させ機能解明のための研究を行う計画である。
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