研究課題/領域番号 |
15K06975
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
平田 章 愛媛大学, 理工学研究科, 講師 (60527381)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | X線溶液散乱 / X線結晶構造解析 / RNA成熟 / 動的分子認識機構 |
研究実績の概要 |
本年度は、tRNAメチル化酵素である酵母由来Trm7-Trm734の動的分子認識機構の解明を目指した研究を進めた。大腸菌発現系を利用して、大量のTrm7-Trm734を調製後、tRNAPheと混合し、Trm7-Trm734-tRNAの三者複合体を調製した。調製したTrm7-Trm734およびTrm7-Trm734-tRNAのX線溶液散乱実験を大型放射光施設(PF-KEK)で行った。その結果、両者の初期モデルである外形構造を決定することができた。両者の外形構造を比較すると、後者のTrm7-Trm734-tRNA複合体は、前者のTrm7-Trm734より少し大きく伸びた構造であることがわかった。おそらく、Trm7-Trm734にtRNAが結合することで、Trm7-Trm734が構造変化して開いた状態になることを示している。このことは、研究計画前に予想していたわれわれの複合体モデルとよく一致していた。また、X線溶液散乱実験の際に、Trm7-Trm734-tRNA複合体の溶液中での単分散条件を決定することができたため、この結果は複合体の結晶化条件にも利用することができる。さらに、結晶構造中では観察できなかったTrm7のC末端側領域は、溶液中でもドメイン構造を形成しておらず、ループ構造であり、基質認識には重要でないことが推定された。Trm7のC末端側の可動ループ領域がどのような役割があるのか不明であるが、この領域を欠損した変異体を作成して活性測定を行う意義があるかもしれない。以上の結果から、Trm7-Trm734が基質認識を行うために、ダイナミックな構造変化を引き起こしていることが示唆される。一方、tRNAメチル化酵素である酵母由来Trm11-Trm112のホモログであるアーキアTrm11のX線結晶構造も決定でき、Trm11が定規メカニズムを採用していることも明らかにしつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度において、予定通りX線小溶液散乱実験を通して、Trm7-Trm734の動的な分子認識機構の大枠を確立することができた。また、結晶構造中では見られなかったTrm7のC末端側領域が、溶液中でも可動ループ領域であることがわかり、基質認識に重要でないという情報も得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、Trm7-Trm734のX線結晶構造とX線溶液散乱実験による解析結果を基盤に、Trm7-Trm734のダイナミックな構造変化に伴う詳細な基質認識機構について、変異体解析を行う予定である。また、Trm7-Trm734がどのようにしてtRNA分子種を区別しているか解明するためにも、tRNAPhe以外のtRNATrpを基質に用いて生化学的解析を行う。一方、tRNAメチル化酵素である酵母由来Trm11-Trm112のホモログであるアーキアTrm11の分子認識機構も解明することにし、決定したTrm11の構造をもとに変異体解析も行う。 28年度の研究計画であるtRNAスプライシング酵素ARMAN-EndAの動的分子認識機構の研究も進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度では、RNA合成に必要な試薬購入費とRNAの受託合成費として物品費を多く計上していたが、RNA合成を独自に大量合成する手法を用いた結果、予想していた以上に経費が掛からなかった。また、経費がかさむことを考え実験補助員を雇用しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の研究計画では、研究成果を国際的な学術雑誌に報告するために雑誌掲載料に費用がかかると予想される。したがって、去年度分を掲載料費として翌年分の「その他」に使用する計画である。
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