本研究では、我々が見出した細菌由来の二つの新奇糖転移酵素(スフィンゴモナス科細菌由来のセラミドグルクロノシルトランスフェラーゼ(Cer GlcAT)と緑膿菌由来のジアシルグリセロールグルクロノシルトランスフェラーゼ(DAG GlcAT)の機能解析を通して、細菌が有する糖脂質の生理機能を明らかにすることを目的とした。 スフィンゴモナス科細菌が有するCer GlcATに関しては、大腸菌で発現させて精製した酵素を使用して酵素合成した糖脂質をLC-MSにより分析したところ、合成された脂質がグルクロノシルセラミド(GlcACer)であることが確認できた。また、Cer GlcAT欠損株の脂質分析により新規スフィンゴ脂質を見出したことから、この脂質を精製し、TLCによる発色試験とLC-MSにより分析したところ、この脂質がセラミドホスホグリセロールであることが明らかになった。さらに、大腸菌で調製した酵素を使用した結晶化のスクリーニングにより、Cer GlcATの結晶を複数取得することが出来たので、それらの構造解析を進めている。 一方、緑膿菌に見出したDAG GlcATの機能解析を行うにあたり、緑膿菌の野生株とDAG GlcAT欠損株から脂質を抽出してLC-MSにより分析し、LC-MSによりリン脂質と糖脂質を定量的に分析する条件を設定した。低リン酸培地で培養した野生株とDAG GlcAT欠損株から抽出した脂質をLC-MSで分析したところ、DAG GlcAT欠損株では野生株で生成していたグルクロノシルジアシルグリセロール(GlcADG)が欠損していることが確認できた。
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