研究課題/領域番号 |
15K06980
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
雲財 悟 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 助教 (60336592)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Rap1b / SynGAP / 結晶構造解析 |
研究実績の概要 |
変異によって精神疾患を発症するリスクが高くなる遺伝子は、「精神疾患リスク遺伝子」と呼ばれる。代表的な精神疾患リスク遺伝子産物synGAPの機能を、構造生物学の手法(X線結晶構造解析、超遠心分析など)で調べて、精神疾患発症メカニズム解明に貢献する。SynGAPは脳神経細胞内でRap1bのシグナルON・OFFスイッチ機能をコントロールするという重要な役割を果たしている。両者はどのように結合して機能発揮しているのか、相互作用解析や、SynGAPとRap1bの複合体のX線結晶構造解析などを行って解明する。 まず、Rap1bの結晶構造解析に成功した。GDP結合型Rap1b、そしてGTPのアナログであるGppNHp結合型Rap1bの高分解能結晶構造解析に成功し、基質の違いによってRap1bのタンパク質部分がどのように構造変化するかを詳細に知ることが出来た。この構造変化はRap1bのシグナルON・OFFスイッチ機構そのものである。また、このON構造とOFF構造の間の平衡を調節しているアミノ酸残基を特定することに成功した。実際にこのアミノ酸残基を置換すると、構造変化の平衡をシフトさせることができた。Rap1bをはじめとしたGTPase型タンパク質は、その分子進化の過程で最適なアミノ酸残基が選ばれていると考えられる。 Rap1bとSynGAPを混合することでRap1bのGTPase活性が上昇する実験も進展している。SynGAP側の特定のアルギニン残基がRap1BのGTPase活性上昇に重要な役割を果たしていることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Rap1bとsynGAPの複合体結晶構造解析を目指している。まずRap1bの高分解能結晶構造解析に成功した。GDP結合型Rap1b、そしてGTPのアナログであるGppNHp結合型Rap1bの高分解能結晶構造解析に成功し、基質の違いによってRap1bのタンパク質部分がどのように構造変化するかを詳細に知ることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
Rap1bとSynGAPの複合体結晶構造解析を目指す。Rap1bと安定な結合を示すsynGAPを探索する。発現調製するsynGAPの「長さ」を調整する。また、synGAPの特定の領域がリン酸化されることで活性がコントロールされることが最近判明したため、リン酸化型synGAPの調製や、疑似リン酸化型synGAPの調製を試みて、Rap1bと安定な結合を示すsynGAPを探索する。良いものが得られ次第、Rap1bとsynGAPの複合体の結晶化スクリーニングを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年4月1日から法政大学生命科学部の准教授に就任した。新しく研究室を立ち上げることになったため。
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次年度使用額の使用計画 |
新しく研究室を立ち上げて本研究を遂行するために、「次年度使用額」を新研究室立ち上げのための物品購入に利用する。翌年度分(平成28年度分)は当初の予定通り、本研究遂行のための物品購入に利用する。
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