研究課題/領域番号 |
15K06985
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
川崎 政人 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (00342600)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | X線結晶構造解析 / エンドサイトーシス / 膜変形タンパク質 |
研究実績の概要 |
エンドサイトーシスはすべての細胞が持つ基本的な機能である。エンドサイトーシスは細胞膜の複雑な変形過程から成り立っている。その過程で細胞膜は、膜変形活性を持つタンパク質と相互作用することで形を変える。2011年に連携研究者により発見されたヒトのSYLFドメインタンパク質はエンドサイトーシスに関与するが、生体膜を球状に変形するというこれまでに例のない膜変形活性を持つ。その新規の膜変形機構の解明には構造情報が不可欠である。本研究ではSYLFドメインのX線結晶構造解析を行う。構造情報に基づき脂質との相互作用と生体膜の変形に関わる残基を同定し機能解析を行う。それによりエンドサイトーシスにおけるSYLFドメインによる細胞膜の形状変化のメカニズムを明らかにする。 ヒトのSYLFドメインは高度高熱菌サーモトーガ・マリティマのSYLFドメインと34%のアミノ酸が同一であり、両者は同じフォールドと考えられる。高度好熱菌サーモトーガ・マリティマのSYLFドメインの結晶について、放射光ビームラインを利用して結晶のX線回折能のチェックを行い、結晶化条件と凍結条件の最適化を行った。セレノメチオニン置換体を作製し異常分散法による位相決定を行い、2.18オングストローム分解能で立体構造を決定することが出来た。サーモトーガ・マリティマのSYLFドメインは新規フォールドであることが明らかになった。その構造に基づいてヒトSYLFドメインのモデル構造を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究実施計画を完全に達成することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に得られたヒトSYLFドメインのモデル構造に基づき、結晶化へのデザインを行う。タンパク質表面のアルギニンやリジン残基をアラニンに置換することで表面エントロピーを低下させる方法は結晶化に有効である。ただし、アルギニンやリジンは脂質との結合に関与する可能性もあるので、連携研究者の変異実験で活性に影響が無いことが確認されたものについて変異を導入する。さらに、結晶化を阻害すると考えられるループ部分を取り除くなどの改変タンパク質をデザインする。これらの合理的なデザインによりヒトSYLFドメインを結晶化する。
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