エンドサイトーシスはすべての細胞が持つ基本的な機能である。エンドサイトーシスは細胞膜の複雑な変形過程から成り立っている。その過程で細胞膜は、膜変形活性を持つタンパク質と相互作用することで形を変える。2011年に連携研究者により発見されたヒトのSYLFドメインタンパク質はエンドサイトーシスに関与するが、生体膜を球状に変形するというこれまでに例のない膜変形活性を持つ。その新規の膜変形機構の解明には構造情報が不可欠である。本研究ではSYLFドメインのX線結晶構造解析を行う。構造情報に基づき脂質との相互作用と生体膜の変形に関わる残基を同定し機能解析を行う。それによりエンドサイトーシスにおけるSYLFドメインによる細胞膜の形状変化のメカニズムを明らかにする。 ヒトSYLFドメインはリン酸化されたイノシトールリン脂質に結合する。ヒトSYLFドメインの結晶構造では、リン脂質結合部位と予想される塩基性残基に富んだ領域が複数存在する。ヒトSYLFドメインのイノシトールリン脂質結合部位を特定するためにヒトSYLFドメインとイノシトールリン酸の共結晶化を試みたが、複合体の結晶を得ることは出来なかった。ヒトSYLFドメインのイノシトールリン酸との結合を表面プラズモン共鳴により調べたところ、平衡解離定数は数百μM程度であり、結合は比較的弱いものであることが明らかになった。
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