研究課題
RhoファミリーGタンパク質の活性化因子であるRhoGEFタンパク質の多くは、分子内にGEF反応の触媒ドメイン以外の機能ドメインを介して、上流シグナルからの活性化の制御を受けている。本研究では、RhoGEFタンパク質の活性化制御機構の解明を目的として、X線結晶構造解析ならびにX線溶液散乱測定により、全長またはマルチドメインタンパク質の状態でRhoGEFタンパク質の立体構造を解析する。H28年度は、前年度までに発現系を構築した6種類以上のRhoGEFタンパク質について、異なる発現系を組み合わせて、基質となるRhoファミリーGタンパク質(RhoA, Rac1,Cdc42)との複合体としての試料調製と結晶化スクリーニングを実施した。結晶が得られた複合体試料については、放射光施設を利用してX線回折実験を行った。その結果、多重基質特異性DOCKファミリーRhoGEFとしては初めてDOCK7について触媒ドメイン(DHR-2)とCdc42の複合体の構造決定に成功した。さらに立体構造に基づく機能解析の一環として、ビアコアの手法を用いて、DOCK1のDHR-2ドメインとその活性を阻害する低分子化合物との相互作用解析を行った。またインターセクチン2についてDH-PHドメインに加え異なる数(1~5)のSH3ドメインを含むコンストラクトを構築し、動的光散乱により流体力学半径の測定を行った。その結果、フレキシブルなループでつながれたマルチドメインタンパク(インターセクチン2)は全体としても揺らぎの自由度を保っていることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
前年度までに発現系を構築したDH-PHタイプおよびDOCKファミリーのRhoGEFタンパク質6種類を用いて、X線結晶構造解析を行った。さらに、新たに1種類の発現系構築を進めている。またマルチドメインでは結晶化に適したサンプルが得られない場合を想定し、DOCKファミリーの制御ドメインに結合する因子3種類の発現系構築と試料精製を進めている。またインターセクチン2についてもSH3ドメインの数の異なる複数のコンストラクトを調製し、物理化学的な性質の解析を進め、溶液中のマルチドメインタンパク質としての挙動について重要な示唆が得られつつある。これらの進捗状況から、本研究課題は当初計画通り概ね順調に進行している。
引き続き、調製されたタンパク質・結晶を用いて多角的に構造解析を進める。DOCK7については、DHR-2ドメインの結晶構造と機能解析の成果を学会や誌上で発表する。マルチドメインを含む領域についても複合体の結晶が得られているが、現在のところ構造解析可能なX線回折像は得られていない。このため、さらなる発現領域の改変や、他の因子の共存下での試料調製も検討し、複合体の安定性・単分散性をゲルろ過等の手法により評価しながら測定を実施することで、RhoGEFタンパク質のドメイン配置の変化を観察する。またインターセクチンに2についてもコンストラクトのシリーズに対し解析を進める。これまでの成果の学会等での発表を予定している。
計画通り順調に研究成果が得られており、次年度は最終年度として論文投稿のために当初計画よりも多めに残した。
当初計画通り、タンパク質の発現・精製・結晶化等の構造解析用の消耗品を購入する。また、学会や誌上での成果発表に当該助成金を充てる計画である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)
Cell Reports
巻: 19 ページ: 969-980
https://doi.org/10.1016/j.celrep.2017.04.016