【遊離糖鎖の解析法の開発】細胞内遊離糖鎖の精細な解析には、貯蔵多糖由来と思われる大量のグルコースオリゴ糖を選択的に除去しなければならない。そこで分析試料から水抽出により遊離オリゴ糖を回収した後、酵素処理によりグルコースオリゴ糖を選択的に単糖にまで分解し除去する方法を試みたところ、グルコアミラーゼとα-アミラーゼを共に作用させた時に効率よくグルコースオリゴ糖を除去できることが分かった。これにより細胞内遊離糖鎖の効率的かつ高感度な分析が可能となった。 【ムチン型糖鎖の効率的な解析法の開発】糖タンパク質糖鎖の中でもムチン型糖鎖は特に不安定であり、現在用いている条件下では20~50%が、主にピーリング反応により分解してしまう。しかも本研究の標的である組織サンプルを用いた時には、精製された糖タンパク質よりも、この分解はさらに顕著になる。これに対して最近、カルシウムなどの二価カチオンの存在により分解が促進されていることが示唆され、EDTAや酸による前処理により収率が改善されることが報告された。そこで本研究では、組織サンプルに対してEDTAや種々の酸による前処理をした後に、ヒドラジン分解と蛍光標識法を用いてムチン型糖鎖の分析を行ったところ、EDTA処理がピーリング反応による分解をもっとも抑え、良い収率をもたらすことが分かった。これによりムチン型糖鎖の効率的かつ高感度な分析が可能となった。 【糖脂質糖鎖の解析法の開発】微量な組織サンプルからの糖脂質の抽出法について検討を行い、溶媒抽出法により効率よくかつ十分な純度で調製することができるようになった。
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