研究課題
SCF-Fbw7 ユビキチンリガーゼは血球系細胞の分化増殖の制御因子の多くをその分解標的にしていることがわかっている。 我々が見出した分解標的のひとつであるc-Mybもその因子に属するものである。c-Mybは B細胞および T細胞の分化に関与するが、免疫反応で重要な役割を担うこれらの因子を制御するために、c-Myb自身が量的質的制御を受けていると考えられる。その機構を明らかにするには、Fbw7の結合が回避されることで分解に抵抗性を獲得するように 遺伝子改変させたc-Myb T572Aノックイン(KI)マウスの表現型を解析することが有用と考えた。ホモ変異型では長期飼育によって 肺、肝臓に、炎症反応によって惹起されたと考えられる Bリンパ球を主とするリンパ球浸潤による臓器障害を発生する例が認められた。これはダニ粉吸引による喘息発症モデルで起こった障害像と近似し、浸潤部では樹状細胞 (DC)を含めた複数種の細胞が部分的にc-Myb陽性であった。DCやTfh 細胞は B細胞の走化因子であるCXCL13を発現するが、CXCL13遺伝子プロモータ上にc-Myb応答配列が存在したため、この転写活性化にc-Mybが寄与する可能性がでてきた。そこでPromoter assayの系で検討したところ、c-MybはCXCL13転写を活性化する能力を持つ事がわかった。このことは c-Mybがリンパ球の分化増殖に寄与するのみならず、炎症発生時のリンパ球の機能も制御している可能性を示唆するものである。
3: やや遅れている
Fbw7による分解抵抗性を獲得した c-Myb T572A KIマウスの炎症惹起時の表現型を解析する中で、c-MybはCXCL13を新規下流因子として、その転写活性化を介して樹状細胞の機能に関与している可能性が見出された。そこで組織像の解析と共にc-Mybの新規下流因子への転写活性化のメカニズムの解析を進めている。炎症部位の多重免疫組織染色では c-Myb発現細胞近傍でCXCL13の放出が観察されたが、正常肺ではどちらのタンパク質の存在も検出されず、これらが炎症組織で特異的に発現増強した可能性を示唆する結果であった。マウスCXCL13の 転写開始点上流約2kbの領域には c-Myb応答コンセンサス配列が5カ所存在する。c-Mybの結合部位を探るため Luciferase assayを行なったところ、コンセンサス配列とは異なる部位にc-Mybが結合することがわかった。
・[ CXCL13転写調節機構の詳細を知る] c-MybのCXCL13 promoter上への結合をChIPで確認する。・[内因性CXCL13転写調節能を確認する] リンパ節または脾臓由来リンパ球を対象にc-MybとCXCL13発現の関係をFACSで解析すると共に、 培養系に移したリンパ球でc-Mybノックダウン時のCXL13発現レベルへの影響を調べる。・[CXCL13の機能への寄与を調べる] Tfh 細胞または FDCのc-Myb KDによるCXCL13レベル低下がもたらすB細胞の走化性への影響をMigration assayで評価する。・[喘息モデル肺浸潤部でのKIの影響] c-Mybレベル上昇をQRT-PCRと免疫染色によってmRNAとタンパク質両面から評価してKIの影響をみる。
当初の計画であるc-Myb T572Aノックインマウスの炎症惹起時の表現型の解析過程で、 H29年度に予想外にc-Mybが新規下流因子への転写活性化を介して免疫細胞の機能に関与している可能性を見出した。その可能性を追求するために、当初の計画に加えて新たにc-Mybの新規下流恩師への転写活性化メカニズムを進める事となり、本研究課題は期間延長して研究を継続する必要が発生した。
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