研究課題
糖タンパク質は、N型糖鎖からマンノースが2段階で刈り取られることによって分解すべき基質として認識される。我々は、このマンノース刈り込みの第1段階がEDEM2により実行され、第2段階がEDEM3およびEDEM1により実行されることを明らかにしている。本年度では、EDEM2を欠損したヒトHCT116細胞を詳細に解析することにより、EDEM2によるマンノース刈り込みはEDEM3による刈り込みに必須であること、EDEM3は第1段階の刈り込みを受けた糖タンパク質と好んで相互作用することを示唆する結果を得た。したがって、第1段階のマンノース刈り込みには、基質糖タンパク質の糖鎖をEDEM3に認識されうる構造へ変換する意義があると考えられた。また、EDEM2の酵素活性の生化学的な検出を目的として、人工ヌクレアーゼTALENとジーンターゲティング法を組み合わせた手法により、タンパク質の発現に汎用される293細胞のEDEM2欠損株を作成した。作成したEDEM2欠損293細胞においては、基質糖タンパク質のマンノース刈り込みがHCT116細胞の場合と同様に停止した。この結果は、EDEM2の機能が細胞種によらず普遍的であることを示すものである。続いてHisタグを付加したEDEM2(EDEM2-His)をEDEM2欠損細胞に安定的に導入した。このEDEM2-His安定発現細胞においてはマンノース刈り込みが回復していることが確認された。したがって、安定発現細胞からEDEM2-Hisを精製することにより、EDEM2の酵素活性を生化学的に検討することが可能と期待される。
3: やや遅れている
初年度では、EDEM2によるマンノース刈り込みの意義を示唆する成果を得るとともに、タンパク質発現に汎用される293細胞のEDEM2欠損株の作成、およびEDEM2-His安定発現株の作成に成功した。当初の計画ではすでに保有していたHCT116細胞のEDEM2欠損株を用いてEDEM2-His安定発現株を作成する予定であったが、発現量の観点から293細胞に切り替えた。そのため、実際にEDEM2-Hisの精製を完了するまでにはいたっておらず、やや遅れていると判断した。
作成したEDEM2-His発現細胞より、EDEM2-Hisの精製を行う。また、定法にしたがって合成糖鎖を調製し、精製したEDEM2-Hisの酵素活性を検討する。精製したEDEM2-His複合体の構成因子の同定についても、質量分析法を用いて試みる。
初年度に予定していたEDEMタンパク質の精製実験を次年度に実施することとなったため。
次年度に使用することとした助成金は、すべてタンパク質精製にかかる消耗品の経費に充てる。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 備考 (1件)
生化学
巻: 88 ページ: 257-260
10.14952/SEIKAGAKU.2016.880257
The Journal of Cellular Biology
巻: 211 ページ: 775-784
10.1083/jcb.201504109
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2015/151117_2.html