研究課題/領域番号 |
15K06996
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岡田 徹也 京都大学, 理学研究科, 助教 (70378529)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 小胞体関連分解 / マンノシダーゼ |
研究実績の概要 |
本研究は、EDEMファミリータンパク質(EDEM1/2/3)による構造異常タンパク質認識とマンノーストリミング機構の解明を目的としている。我々が樹立したEDEM2破壊株ではモデル異常糖タンパク質のマンノーストリミングが起こらないが、この破壊株に野生型EDEM2を過剰発現させるとマンノーストリミングが回復する。そこで本年度では、この表現型の回復を指標として、点変異導入解析によりEDEM2のマンノシダーゼ活性に必須なアミノ酸の同定を試みた。その結果、1アミノ酸置換によってマンノシダーゼ活性が欠失あるいは低下するアミノ酸部位を3箇所同定することに成功した。EDEM1/2/3は、マンノシダーゼホモロジードメインと、それぞれに特徴的なC末端領域を有しているが、同定した3箇所のうち2箇所についてはマンノシダーゼホモロジードメイン内に位置しており、EDEM1およびEDEM3においても保存されていた。したがって、これらのアミノ酸はEDEMタンパク質のマンノシダーゼ活性に共通して必須であると予想される。興味深いことに、同定した残り1箇所のアミノ酸残基はC末端領域に位置しており、ファミリー間で相同性の低い領域もEDEMタンパク質の活性発現に重要な役割を果たすことが明らかとなった。このアミノ酸はEDEM1およびEDEM3では保存されていないことから、EDEM2特異的な活性制御機構の存在が示唆される。C末端領域に着目した解析をすすめることにより、各EDEMタンパク質の基質認識や特異性を決定するメカニズムの解明につながる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マンノシダーゼ活性の生化学的検証を目的としたEDEMタンパク質複合体の精製は遂行中であるが、精製とは異なるアプローチによってEDEM2のマンノシダーゼ活性に必須なアミノ酸部位を複数同定することに成功した。この知見と手法は、EDEM1およびEDEM3の機能解析にも適用することが可能であり、今後の研究の大きな進展が期待される。予備的な解析結果として、同定したアミノ酸部位が他分子との相互作用に寄与している可能性も見いだしている。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
変異導入による機能解析が順調に進んでいることから、EDEM1およびEDEM3についても同様の解析を行い、マンノシダーゼ活性発現メカニズムについて、EDEM1/2/3の共通点と相違点を明らかにする。EDEM2のマンノシダーゼ活性に必須であることが明らかとなったC末端領域のアミノ酸残基については、タンパク質間相互作用に関与することが予想される。そこで、種々の結合候補タンパク質との相互作用に関してこの残基の寄与を詳しく検討する。当該アミノ酸残基依存的に結合することが確認された分子については、遺伝子破壊を行ってその影響を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
点変異導入による機能解析が順調に進んだことから、EDEM1およびEDEM3への変異導入解析を重点的に実施するよう計画を微修正したため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度へ繰り越した研究費はEDEM1およびEDEM3への変異導入解析に使用する。
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