研究課題/領域番号 |
15K06997
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
奥村 宣明 大阪大学, たんぱく質研究所, 准教授 (20224173)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ジペプチド / ジペプチダーゼ / 基質特異性 / 蛋白質代謝 / ペプチド代謝 / イミダゾールジペプチド |
研究実績の概要 |
生体内には種々のジペプチドが存在している。ジペプチドには、蛋白質の細胞内分解や消化における最終段階で生成するもの、および、カルノシンなど生体内でアミノ酸から酵素によって合成されるものがあり、タンパク質代謝、アミノ酸代謝などの体内環境の恒常性維持に重要な役割を担っている。近年、ジペプチド分解酵素、カルノシン合成酵素、ジペプチド輸送体などが同定され、ジペプチドの機能解析が進展してきた。私たちはカルノシンを分解するジぺプチダーゼCN2を同定し解析を行ってきたが、最近、これがカルノシン以外にも特定のジペプチドを明確な基質特異性を持って分解することを見出した。本年度は、基質ペプチドの解析からジペプチドの蛋白質代謝や恒常性維持機構における重要性を探ることを目的として、下記の研究を行った。 (1) ジペプチダーゼの活性測定法の開発・・・ジペプチダーゼにはそれぞれ特有の基質特異性があるが、これまで詳細な解析はなされていない。これを行うには効率的で正確な活性測定法が必要となる。そこで、本研究ではジペプチドを誘導体化してHPLCで分離する方法を確立し、これを用いて種々の解析を行った。 (2) CN2の基質特異性の比較解析と機能の解析・・・上記の活性測定法を用いて、CN2の基質特異性について、N-末側、およびC-末側アミノ酸のそれぞれについて検討した。その結果、中性溶液中の種々の条件下で分解されるジペプチドの種類を明らかにした。 (3) 細胞内でのジペプチダーゼの活性評価・・・これまでCN2の活性についてin vitroで解析を進めてきたが、細胞内で実際にどのような活性を示すか明らかではない。そこで、培養細胞の培地にカルノシンを加え、カルノシン分解活性の測定を試み、それに成功した。しかし、強制発現させたCN2と内在性の酵素の区別が明らかでなく、引き続き検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H27年度は、任意のジペプチドを分解する活性を測定する方法を確立して、これを用いて実際にCN2の種々のジペプチドに対する活性を測定し、これまで知られていなかったCN2の基質特異性に関するいくつかの特徴を明らかしており、この点についてはおおむね順調と言える。また、CN2と近縁の酵素であるCN1の精製標品の調整や、培養細胞によるジペプチド分解活性の測定ができたことから、H28年度以降の解析の準備もすすんでいると考えている。一方で、明らかになった基質特異性の特徴は予想に反するものもあり、それを生化学的、および生理学的見地から解釈し、理由を説明し、意味づけを行うことはまだ十分ではなく、今後の課題と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、CN2および近縁の酵素(CN1など)について、より多くの基質を種々の条件で測定することを予定している。そのためには、より迅速な活性測定法が必要であり、現在も検討はしているが、現時点では感度の面で不十分と思われるので、この点についても今後検討をすすめる。さらに、こうした解析で明らかにされる酵素活性の特徴の反応機構からみた原理、ならびに生理学的意義について、多角的に解析と考察を進める。
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