ジペプチドは蛋白質の分解や消化における最終段階の中間体として、また、カルノシンなど生体内で合成される機能的分子として、タンパク質代謝、アミノ酸代謝をはじめとする体内環境の恒常性維持に重要な役割を担っている。近年、ジペプチド分解酵素、カルノシン合成酵素、ジペプチド輸送体などが同定され、ジペプチドの機能解析が進展してきた。私たちはカルノシンを分解するジぺプチダーゼCN2を同定し解析を行ってきたが、最近、これがカルノシン以外にも特定のジペプチドを明確な基質特異性を持って分解することを見出した。 CN2は、もともとMn2+存在下でカルノシンを分解する酵素として見出したが、Mn2+との結合が弱いこと、細胞内のMn2+濃度が活性化に必要な濃度より低いと考えられることから、生理的条件における活性化についてさらに検討を行ってきた。その結果、in vitroでは、CN2がZn2+とより強く結合すること、またZn2+存在下ではカルノシンを分解しないが、Mn2+存在下とは異なる基質特異性で特定のジペプチドを加水分解することを明らかにした。さらに、培養細胞(HEK293T)を用いてCN2の細胞内での活性を測定する方法を確立し、基質特異性の検討を行った結果、CN2がHEK293T細胞内でZn2+結合型のin vitroの活性と同様の基質特異性を示すことが明らかになった。これらの結果から、CN2が通常の培養条件下のHEK293T細胞内において、Zn2+結合型として機能していることが示唆された。これらの結果と、組織特異性などのこれまでの結果とを考え合わせると、腎臓や小腸、あるいはその他の細胞の細胞内ペプチド分解系におけるCN2の位置づけが明らかになってきた。
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