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2016 年度 実施状況報告書

翻訳の速度論的制約に立脚した全く新しい小胞体膜挿入機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15K07000
研究機関神戸大学

研究代表者

山本 泰憲  神戸大学, 医学研究科, 准教授 (30467659)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード小胞体 / ヘアピン型膜タンパク質 / 膜変形タンパク質 / テイルアンカー型タンパク質
研究実績の概要

分泌経路上の膜タンパク質はまず小胞体膜に挿入され、その後適切な膜系へと輸送されることから、膜タンパク質の小胞体膜挿入機構を理解することは大変重要な課題である。膜タンパク質を小胞体膜に挿入する主要な経路として膜透過装置トランスロコンがあるが、トランスロコンでは膜挿入できないトポロジーを持つ膜タンパク質も多数存在し、その分子メカニズムは不明な点が多い。本研究では膜タンパク質の「翻訳速度」に着目し、速度論的な制約からトランスロコンを経由できない膜タンパク質の膜挿入を解析することで、未知の小胞体膜挿入機構を解明することを目的とする。さらに、速度論的制約を受ける主要な膜タンパク質が小胞体膜変形タンパク質であることに着目し、膜挿入装置の観点から小胞体膜形態の生理的意義についての新たな概念の提示を試みる。
私どもは速度論的制約下にあるヘアピン型膜タンパク質に結合する細胞質因子としてp36を既に精製、同定している。本年度はp36によるヘアピン型膜タンパク質の膜挿入機構の解析を行った。その結果、p36は脂質修飾を介してヘアピン型膜タンパク質の小胞体膜へのターゲティングを調節していることを明らかにした。さらに、蛍光顕微鏡で膜挿入を定量、評価できる試験管内再構成アッセイ系を駆使し、小胞体膜タンパク質p42がヘアピン型膜タンパク質の膜挿入を調節していることを明らかにした。p42はp36と結合することから、速度論的制約下にあるヘアピン型膜タンパク質の小胞体膜挿入装置の分子実体がp36とp42からなるタンパク質複合体であると考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、細胞質因子p36が脂質修飾を介してヘアピン型膜タンパク質の小胞体膜へのターゲティングを調節していることを明らかにした。さらに、独自に開発した試験管内再構成アッセイ系を駆使することで、p36に結合する小胞体膜タンパク質p42がヘアピン型膜タンパク質の膜挿入を調節していることを明らかにした。これらの結果から、速度論的制約下にあるヘアピン型膜タンパク質の小胞体膜挿入装置の分子実体がp36とp42からなるタンパク質複合体であると考えられた。このように、膜透過装置トランスロコンやCAML-WRB複合体(テイルアンカー型タンパク質の膜挿入装置)といった既知の膜挿入装置とは全く異なる、新しい小胞体膜挿入装置を物質的に解明できたことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

同定した膜挿入装置p36-p42複合体および、それに基質となるヘアピン型膜タンパク質が結合した状態の複合体について結晶構造解析、クライオ電子線トモグラフィーを行い、膜挿入装置の作動と脂質膜の構造変化の機能関係を明らかにする。得られた結果をもとに、p36-p42複合体が速度論的制約下にある膜タンパク質を小胞体膜に配向挿入する原理を明らかにする。
ヘアピン型膜タンパク質の多くは小胞体膜変形タンパク質であることから、p36-p42複合体による小胞体膜挿入と小胞体膜形態との間に密接な機能関係があると予想される。そこで、膜変形活性を欠損した変異体基質を作成し、膜挿入と膜変形との間の相関関係を検討する。また、小胞体膜変形タンパク質を過剰発現あるいはRNAiノックダウンして小胞体膜のシート構造やチューブ構造を人工的に障害させ、p36-p42複合体の膜挿入活性に与える影響を解析する。さらに、p36-p42複合体の変異体や膜挿入活性を制御するペプチド等を培養細胞に過剰発現または添加し、小胞体膜のシート構造やチューブ構造に与える影響を解析する。得られた知見を総合し、p36-p42複合体による膜挿入制御と小胞体膜構造の間の機能関係を明らかにし、小胞体の膜形態の生理的役割、意義について膜挿入の観点から新たな概念を提示する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて その他

すべて 備考 (1件)

  • [備考] 神戸大学大学院医学研究科 生理学・細胞生物学講座 膜動態学分野ホームページ

    • URL

      http://www.med.kobe-u.ac.jp/membrd/

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公開日: 2018-01-16  

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