研究課題
ミトコンドリアは,融合と分裂を頻繁に繰り返している。私たちは出芽酵母を用いて, Cdc48 の機能欠損がミトコンドリアの融合反応不全を引き起こすこと,融合反応に必須なミトコンドリア外膜タンパク質Fzo1の安定化を引き起こすことを見出している。Cdc48はサイトゾルに局在するAAAシャペロンで,ユビキチン化タンパク質を主な基質とし,その高次構造をほどいたり,複合体を脱会合したりする。Cdc48は,細胞内で様々な反応に必須であるが,それぞれの機能は,Cdc48に結合するアダプタータンパク質によって規定されていると考えられている。そこで,ミトコンドリア形態維持に関与するアダプター因子を探索した。その結果,UBP3欠失株において著しいミトコンドリア形態異常が観察された。この時,Fzo1の分解速度は野生株とほとんど変化がなかった。一方,UBX2の欠失株において,ミトコンドリア形態は正常だが,Fzo1の分解阻害が観察された。したがって,Fzo1の分解促進とミトコンドリア融合反応とは関連性が低いことがわかった。Fzo1は,異なる2種類のユビキチン化を受けることがわかっている。一つはミトコンドリア融合反応に必須なユビキチン化で,脱ユビキチン化酵素Ubp12によって除去される。もう一つは,Fzo1の分解を促進するユビキチン化で,脱ユビキチン化酵素Ubp2によって除去される。UBP3欠失株では,Ubp12の安定化が見られた。Ubp12の量が増えることで,融合反応に必須なFzo1のユビキチン化が除去され,これによって,ミトコンドリア融合が阻害されたと考えられる。一方,UBX2欠失株では,Ubp2のやや不安定化が観察された。Ubp2の不安定化は,分解を促進するユビキチン化Fzo1の蓄積を促進すると考えられるが,Fzo1の分解阻害という実験結果と矛盾する。したがってUBX2欠失株で見られたUbp2の不安定化とFzo1の分解促進はそれぞれ独立した現象であると考えられる。
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Scientific Reports
巻: 7 ページ: 5475
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Autophagy: Cancer, Other Pathologies, Inflammation, Immunity, Infection, and Aging
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10.1016/B978-0-12-812146-7.00005-6