研究課題/領域番号 |
15K07008
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研究機関 | 盛岡大学 |
研究代表者 |
成田 新一郎 盛岡大学, 栄養科学部, 教授 (30338751)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 細胞内タンパク質分解 / 表層ストレス応答 / 細菌細胞表層 / プロテアーゼ / シャペロン / 外膜タンパク質 / ジスルフィド結合 / タンパク質間相互作用 |
研究実績の概要 |
BepAはグラム陰性細菌のペリプラズム空間に存在するタンパク質であり、外膜タンパク質のアセンブリーを促進するシャペロンとして働くとともに、アセンブリーに失敗した外膜タンパク質を分解するプロテアーゼとして働く。BepAはペプチダーゼM48ファミリーに属するメタロプロテアーゼであり、アミノ末端側にプロテアーゼドメイン、カルボキシル末端側にtetratricopeptide repeat (TPR)ドメインを持つ。TPRドメインは一般にタンパク質間相互作用に関与することから、BepAはこの領域で基質と相互作用することが考えられる。BepAと基質との相互作用の様式を明らかにすることを目的として、BepAのTPRドメインを構成する全ての残基に対応するコドンに部位特異的変異を導入し、これらを一つずつアンバーコドンに置換した変異体をコードするプラスミドセットが構築されている。アンバーサプレッサーtRNAと変異型アミノアシルtRNA合成酵素を利用して、これらのコドンに対応する位置に光架橋性非天然アミノ酸パラベンゾイルフェニルアラニン (pBPA)を持つBepA変異体を大腸菌細胞内で発現させ、365 nmの近紫外光を照射することにより、アミノ酸残基レベルの空間分解能でBepAと他因子との近接部位を決定するとともに、それらの因子を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者が代表を務めた平成24~26年度基盤研究(C)「ストレス応答に関与するシャペロン/プロテアーゼを介した細菌細胞表層の品質管理機構」の結果、BepAのTPRドメインを構成する全ての残基に対応するコドンに部位特異的変異を導入し、これらのコドンに対応する位置にpBPAを導入することにより、BepAと基質との相互作用様式を解析するためのツールが構築された。これまでの解析により、複数の残基でBepAと細胞内因子との架橋複合体が形成されることがわかっている。外膜タンパク質の外膜への組み込みに働くBAM複合体を構成する因子のうち、BamAとBamDに対する抗体を用いてイムノブロッティングを行ったところ、BepAの複数のpBPA変異体との間で架橋が形成されていることがわかった。非特異的クロスリンカーを用いたこれまでの解析からBepAがBAM複合体と相互作用することが示唆されていたが、BepAのTPRドメインの特定の残基がこの相互作用に関わることが証明された。また、BepAのシャペロン/プロテアーゼ活性は、リポ多糖の輸送に関わる外膜タンパク質であるLptDの生合成に寄与することがわかっているが、BepAがLptDと直接相互作用する証拠はこれまでに得られていなかった。本研究では、BepAのTPRドメインのアミノ酸残基をpBPAに置換した変異体の一つが、近紫外光依存的に架橋複合体を形成し、かつその架橋複合体が抗-BepA抗体および抗-LptD抗体で検出できることがわかった。この結果から、BepAはTPRドメインを介してLptDと直接相互作用し、その生合成に関与していることが明らかとなった。以上のような進捗状況であるため、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
pBPAを介した架橋形成が近紫外光の照射に依存することを利用して、大腸菌を35Sメチオニンを含む培地で培養することによってタンパク質を代謝ラベルし、その後に経時的に光照射を行い、BamA, BamDやLptDとBepAとの架橋形成がどのように変化するかを追跡する。これらの実験により、外膜タンパク質のフォールディングの促進および分解においてBepAが作用する過程を明らかにする。 また、bepA欠失株の薬剤感受性を抑制するマルチコピーサプレッサーがのうち、bepA欠失株の薬剤感受性を抑制する機構が明らかになっていないサプレッサーについて、その抑制機構を解析することで、BepAの生理的意義を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画ではBepAと架橋を形成する因子を同定するために、大腸菌の培養と架橋複合体の精製を網羅的に行うことを計画していた。当該年度は、それに先立ってイムノブロッティングによる因子の同定を試みたところ、前述したようにBamA, BamD, LptDが架橋因子であることが確認できた。特にLptDはBepAのシャペロン/プロテアーゼ活性の基質と推定されてきながら、これまでの解析方法では相互作用が証明されなかった因子であったため、当該年度はこの相互作用の解析に注力した。このため当該年度に予定していた恒温振とう培養器の導入を次年度に延期した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に購入予定であった恒温振とう培養器を平成28年度に導入する。購入には次年度使用額を充てる。当該備品はpBPAを導入したBepAを発現する大腸菌を大量培養する際に使用する。その他の試薬・消耗品は当初の計画どおり購入し、実験に用いる。
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