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2015 年度 実施状況報告書

抗がん剤カンプトテシンと複製フォーク

研究課題

研究課題/領域番号 15K07009
研究機関東北薬科大学

研究代表者

関 政幸  東北薬科大学, 薬学部, 教授 (70202140)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワードDNA複製 / DNAトポイソメラーゼ / カンプトテシン / MCMヘリカーゼ / DT40細胞 / 遺伝子破壊株 / 複製フォーク / Tipin
研究実績の概要

本研究では、真核細胞のDNA複製フォーク進行における「”二本鎖DNAの巻き戻し” と “フォーク前方の torsional stress の解消” を連動させる制御機構」の解明を目指す。前者の反応はMCM ヘリカーゼが、後者は DNAトポイソメラーゼI (Top1)が主にその役割を担うが、その両者の反応を連動させる制御機構についての知見はない。申請者はこれまでに、Tipin (MCM複合体とともに複製フォークと供に移動できるタンパク質) が、MCMのヘリカーゼ反応と Top1の torsional stress解消反応を連動させる可能性を見いだしている (J. Biol. Chem. 289, 11374-11384, 2014)。従って、TIPIN 遺伝子がノックアウトされた脊椎動物細胞の示す抗がん剤カンプトテシン(CPT; Top1 阻害剤) への高感受性を指標に、「複製フォークにおけるヘリカーゼ活性とトポイソメラーゼ活性の連動」の分子機構の解明を、より具体的な本研究の目標に掲げる。

本年度は、Tipin と同様に複製フォーク因子であるClaspinが、Tipin と同様のヘリカーゼとトポイソメラーゼのカップリングを担うことができるのか?さらにニワトリDT40 Tipin/Claspin二重遺伝子破壊株の作製を試みると同時に、DNAトポイソメラーゼ I の条件致死株の作製を試みた。しかしながら、「現在の進捗状況」で述べるように、Tipinと Claspin の二重変異株の作製およびTop1条件致死株の作製は、当初目的とは異なり、達成できなかった。

なお本年度中に、MCMヘリカーゼの制御という観点から、 Cdt1による新規制御機構(Cdt1が MCMヘリカーゼに働きかけて複製フォークの進行を遅延させる)を東邦大学の多田博士との共同研究で、提唱できている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由


本年度は、Tipin と同様に複製フォーク因子であるClaspinが、Tipin と同様のヘリカーゼとトポイソメラーゼのカップリングを担うことができるのか?さらにニワトリDT40 Tipin/Claspin二重遺伝子破壊株の作製を試みると同時に、DNAトポイソメラーゼ I の条件致死株の作製を試みた。

その結果、CPT処理時の細胞において、Claspin は Tipin と異なり、2つの活性を連動させるのに必須ではないことが示唆された。しかしながら、Tipinと Claspin の二重変異株の作製は困難を極め、得られたたった一つの二重変異株候補の細胞増殖能は著しく低く、Tipin と Claspinは両者で協力して複製フォークの機能を保全していることが予想された。運の悪いことに、唯一得られた1クローンには細胞の継代中に抑制変異が生じているとみえ、今後の詳細な性状解析には適さないことが判明した(むしろ抑制変異があったためクローニング可能になったとも考えられる)。さらに、計画にあげていたTop1遺伝子破壊用ベクターを用いた条件致死株 (Top1の破壊は致死になると予想される)の作製が予想外(我々は以前に Top3条件致死株の作製と解析に成功しているにもかかわらず)に困難を極めた。

今後の研究の推進方策

遺伝子破壊株の作製については、株が完成すれば詳細な解析データが続々と出てくることが必然となる。一方、作製できない場合は All or none 的に、全くデータを得ることができない。初年度の試みの経過を見ると、これまでの経験から、当初目標の遺伝子破壊株の作製に依存した研究計画は中止し、他の計画のほうを優先すべきと判断した。

よって、2年目の計画から Tipin/Claspin 二重破壊株、Top1条件致死株の作製を外し、Tipin の deletion の変異体などの作製を通じた解析に軸足を移し、着実なデータの収集を目指すこととする。

次年度使用額が生じた理由

初年度に、DT40 Tipin/Claspin二重変異株と Top1条件致死株の作製を達成目標にあげていたが、それら2つとも作製が困難であったため、それらの株を詳細に性状解析するために充てていた予算を使用する状況に至らなかったため。

次年度使用額の使用計画

当初計画を見直し、初年度に目指した2つの遺伝子破壊株の作製は断念し、1年目に余った予算も含めて、2年目以降の系統的な Tipin deletion 変異株の作製と、その性状解析に予算を集中させ、Tipin のどの部分に 「MCMヘリカーゼと Top1との機能を連動させるドメイン」があるのかなどの実証を急ぎたい。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 3件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Excess Cdt1 inhibits nascent strand elongation by repressing the progression of replication forks in Xenopus egg extracts.2016

    • 著者名/発表者名
      Nakazaki Y, Tsuyama T, Seki M, Takahashi M, Enomoto T, Tada S.
    • 雑誌名

      Biochem. Biophys. Res. Commun.

      巻: 470 ページ: 405-410

    • DOI

      doi: 10.1016/j.bbrc.2016.01.028.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] DNA複製の前後で起こる生命現象と Tipin2015

    • 著者名/発表者名
      関政幸
    • 雑誌名

      生化学

      巻: 87 ページ: 378-380

  • [学会発表] WRNIP1/RAD52遺伝子破壊株の作製と解析2016

    • 著者名/発表者名
      吉村明、矢部晴菜、関政幸、榎本武美
    • 学会等名
      日本薬学会第136年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県横浜市西区)
    • 年月日
      2016-03-26 – 2016-03-29
  • [学会発表] H2A.Zの機能を支えるカノニカル・ヒストン残基2016

    • 著者名/発表者名
      関政幸
    • 学会等名
      第3回 ヒストンバリアント研究会
    • 発表場所
      早稲田大学(東京都新宿区)
    • 年月日
      2016-02-28 – 2016-02-28
    • 招待講演
  • [学会発表] 普遍的なヒストンが多様なDNA介在反応を支える2015

    • 著者名/発表者名
      関政幸
    • 学会等名
      第38回日本分子生物学会年会/第88回日本生化学会大会 合同大会
    • 発表場所
      神戸ポートアイランド(兵庫県神戸市中央区)
    • 年月日
      2015-12-01 – 2015-12-04
    • 招待講演
  • [学会発表] DNA損傷時にWRNIP1はPrimPolと結合する2015

    • 著者名/発表者名
      吉村 明、及川瑞穂、関 政幸、榎本武美
    • 学会等名
      第38回日本分子生物学会年会/第88回日本生化学会大会 合同大会
    • 発表場所
      神戸ポートアイランド(兵庫県神戸市中央区)
    • 年月日
      2015-12-01 – 2015-12-04
  • [学会発表] 正常なセントロメア構造を維持するヒストン残基とその制御機構2015

    • 著者名/発表者名
      中林悠、堀越正美、関 政幸
    • 学会等名
      第54回日本薬学会東北支部大会
    • 発表場所
      岩手医科大学(岩手県盛岡市)
    • 年月日
      2015-09-26 – 2015-09-26
  • [学会発表] 核内反応におけるヌクレオソームの普遍的制御2015

    • 著者名/発表者名
      関政幸
    • 学会等名
      新学術領域「ゲノム普遍的制御」公開シンポジウム
    • 発表場所
      京都大学(京都府京都市左京区)
    • 年月日
      2015-08-28 – 2015-08-29
    • 招待講演
  • [図書] 日本臨床, 73(増刊号6・家族性腫瘍学)「BLM (RECQ2), WRN (RECQ3), RTS (RECQ4)」2015

    • 著者名/発表者名
      関 政幸、多田周右、榎本武美
    • 総ページ数
      5
    • 出版者
      日本臨床社(株)

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公開日: 2017-01-06  

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