我々はこれまでの研究で神経や心ペースメーカー細胞において自発発火特性の制御を担う過分極誘発陽イオンチャネル(HCNチャネル)であるHCN1,HCN2,HCN4が実際にパルミトイル化を受けていることなどを主に異所性発現系を用いた実験により明らかにしてきた(伊藤ら,JPS 2016)。HCN1,HCN2についてはパルミトイル化する責任酵素(Zdhhcタンパク質)の同定も行った。更にHCN2についてはZdhhc3,Zdhhc7がチャネルタンパク質の細胞膜への移行には関与せず、既に細胞膜上に存在するチャネルタンパク質の活性を調節している可能性が示唆する結果を得ることが出来た(現在投稿準備中)。また、HCNチャネル以外のイオンチャネル(主に電位依存性K+チャネル)についてパルミトイル化の標的となる分子について探索を行ったところ、HCNチャネルと比較的構造の類似したKCNHチャネルファミリーのKv10.1,Kv11.1,Kv12.2の3種のイオンチャネルがパルミトイル化を受けていることが明らかになった。今後、HCNチャネルおよびKCNHファミリーチャネルについてパルミトイル化のみならず、他の翻訳後修飾についてもその可能性について検証を行い、翻訳後修飾によるイオンチャネルの機能制御についての網羅的な解明につなげたい。
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