研究課題/領域番号 |
15K07018
|
研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
佐藤 秀明 久留米大学, 医学部, 准教授 (60271996)
|
研究分担者 |
東元 祐一郎 久留米大学, 医学部, 教授 (40352124)
杉島 正一 久留米大学, 医学部, 准教授 (30379292)
原田 二朗 久留米大学, 医学部, 講師 (10373094)
塚口 舞 (古澤舞) 久留米大学, 医学部, 助教 (40624094) [辞退]
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ヘム生合成 / X線結晶構造解析 / 酵素反応 / ポルフィリン / テトラピロール |
研究実績の概要 |
ポルフィリン生合成経路において,ヒドロキシメチルビランシンターゼ(HMBS)の合成する鎖状テトラピロールであるヒドロキシメチルビラン(HMB)は,ウロポルフィリノーゲンIIIシンターゼ(UROS)によって環化されてウロポルフィリノーゲンIIIになる。本研究課題では,HMBSによる4分子の基質ポルホビリノーゲン(PBG)から1分子のHMBへの縮合過程と,UROSによるD環ピロールの反転を伴うHMBの環化過程について,詳細な反応機構の解明を目的としている。 ヒトHMBSに,反応を進行させないPBG類似体を一つだけ結合させたES1型複合体については,これまでにX線結晶構造解析に成功し,補因子の近傍にPBG類似体が結合してHMBS反応を阻害することを示した。今年度は,鎖状テトラピロールであるHMB,ビリルビン(BR)やビリベルジン(BV)とのそれぞれの複合体について,結晶調製と構造解析を試みたが,立体構造の解明には至らなかった。ホロ型HMBSの結晶をBRやBVの溶液に浸した際にあまり着色しなかったことから,結晶中での複合体形成が十分ではなかったと考えられる。さらに,HMBSに対してBRまたはBVを添加して紫外-可視吸収スペクトルの変化を調べたが,いずれも明確なピークシフト等は観測されす,文献で報告されているほど親和性は高くないことが推測された。 一方,HMBSとUROSの間の相互作用について,ネイティブPAGE(電気泳動)法を用いて検討した。両酵素だけの条件の他,PBGまたは基質類似体をそれぞれ添加して検討したが,複合体に対応するような新しいバンドの検出には至らなかった。両酵素間の相互作用が明確に観測されるためには,基質一つ分(モノピロール)の結合では不十分で,HMBに対応する鎖状テトラピロールの結合が必要なのではないかと推察された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
HMBSおよびUROSについて,酵素と基質類似体または生成物類似体との複合体の結晶調製が,文献調査に基づいて予想していたよりも難航したことから,X線結晶構造解析が想定していたほどには順調に進行しなかった。そのために,研究全体の進行に若干の遅れが発生した。
|
今後の研究の推進方策 |
HMBSの酵素-基質類似体複合体のX線結晶構造解析については,ピロールが2~4個連結したES2~ES4型に対応する複合体の立体構造をそれぞれ解析する。HMBSの基質結合部位の構造を明らかにして,4分子のPBGがHMBSの活性部位で連結されていく過程を詳細に検討する。 一方,UROSについては,基質であるHMBの類似体を調製し,HMB類似体結合型UROSの結晶化および構造解析を進める。基質結合に関わると予想されるアミノ酸残基が,HMBの環化反応に果たす役割を考察し,UROSがD環ピロールの反転したウロポルフィリノーゲンIIIを合成する過程について詳しく検討する。 また,HMBSとUROSの間の相互作用については,鎖状テトラピロール等の影響も含めて検討を継続する。両酵素間でHMBを受け渡す機構について明らかにする。 これらの実験の結果に基づき,ポルフィリン生合成経路のHMBSとUROSによって,4分子のPBGからHMBを経て1分子のウロポルフィリノーゲンIIIが合成される過程の反応機構を考察する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
HMBSとUROSのそれぞれについて,酵素と基質類似体との複合体や,酵素と生成物類似体との複合体の結晶調製が難航した。そのために研究全体の進行に若干の遅れが生じ,その分だけ測定実験や学会発表の旅費をはじめとする今年度の助成金に残金が発生した。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度はHMBSやUROSについて,酵素-基質類似体複合体や酵素-生成物類似体複合体のX線結晶構造解析を継続して行うとともに,両酵素の間の相互作用解析や反応解析など,当初の計画に沿った研究を進めていく。これらの研究を遂行するために,今年度の助成金の残金と次年度分として請求した助成金とを合わせて使用する予定である。
|