研究実績の概要 |
微小管上をプラス端方向に移動するキネシン-1とマイナス端方向に移動するキネシン-14とのキメラタンパク質の運動観察により、微小管上を運動する方向を決定する部位の特定が,従来行われてきた。しかしながら、キメラキネシンの種類数が限られていたことなどから、運動方向決定部位の共通認識には至っていない。加えて、近年、ある種のキネシンは1分子で機能する場合と少数分子以上のチームで機能する場合とで、運動方向を変えることが報告され、キネシンが微小管上で運動方向を決定する分子機構は解明されていない。そこで本申請研究では、構造的な基盤に基づき単量体型キメラキネシンをデザインして、大腸菌内で発現させて精製し、キメラキネシンの運動方向及び単頭型キネシンの分子数が運動方向に与える影響を検証することによって、キネシンの運動方向を決定する分子機構を明らかにすることを目指した。本年度は主に、1)昨年度に開発した運動計測系で、運動方向が逆転するようなキメラキネシンを1分子及び少数分子のチームとして運動測定を行った。2)一昨年度から研究対象としているkinesin-14ファミリーのNcdに加え、他のkinesin-14分子でも同様の検証を行い、kinesin-14ファミリーに共通に存在する運動方向決定機構の検証を行った。さらに、3)繊毛内で機能するkinesin-2, 細胞分裂で働くkinesin-5, kinesin-6, kinesin-10についても、一昨年度に開発した運動計測系で、運動測定を行った。4)DNA origamiの技術を用いて、キネシン分子の分子数とキネシン分子間の相対的な立体配置とを制御する系の開発を行い、キネシン分子間に働く相互作用機構の可能性を検証した。
|