研究課題
天然変性蛋白質は、生理的条件下では特定の構造を持たず、標的蛋白質の認識・結合と同時にフォールディング(構造形成)する。高等生物が持つ蛋白質の約3割が天然変性蛋白質であることから、それらの分子認識機構の決定因子を解明し、あらゆる天然変性蛋白質の分子認識機構を統一的に理解することが重要である。そこで平成29年度は次の研究を行った。これまでの研究から、天然変性蛋白質による分子認識機構の決定因子が二次構造への折りたたみやすさであることを明らかにしている。これを検証するために、前年度に引き続き、天然変性蛋白質c-Mybの構造安定性を変化させた複数の変異体を理論的に設計後、実際に作製し、標的蛋白質KIXとの結合能の変化を解析した。また、これまでに得られた知見に基づき、天然変性蛋白質による標的分子認識反応と、球状蛋白質におけるフォールディング反応を統一的に説明できるメカニズムを提唱した。標的蛋白質KIXに結合する天然変性蛋白質であるHIV-1由来Tatについて、15Nラベル体を作製し、生理的条件下(亜鉛結合状態、中性pH)における二次元NMRスペクトルの測定に成功した。また、天然変性蛋白質である転写因子c-Junが標的蛋白質KIXと結合したときの二次元および三次元NMRスペクトルを測定した。ピーク帰属を行い、c-Jun上のKIX結合部位を同定した。以上の他に、変性蛋白質の構造ダイナミクスの解析や、天然蛋白質の立体構造物性に関する理論的解析なども行った。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 4件) 備考 (1件)
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