研究実績の概要 |
最近我々は、多くの免疫学の教科書に載っている「一つの抗体は一つの抗原を認識する」という概念から外れ「複数の抗原を特異的に認識する」ことのできる抗体G2を発見した (Kamatari et al., Protein Sci. 23, 1050-1059, 2014)。本研究は、このG2の抗原認識機構を構造生物学や生物物理学的な立場から解明することである。 本年度は、一本鎖可変領域抗体 (scFv)の作成とNMRを用いた抗原ペプチドの結合実験を行い、抗原ペプチドの結合により抗体側の構造及び揺らぎが大きく変化することを明らかにした。また、小分子化抗体 (Fab)を作成し、抗体及び複合体の構造解析も進めているところである。 我々は、タンパク質の揺らぎがG2の特殊な認識機構を可能としていると考えている。その基盤となるこれまでのタンパク質の揺らぎに関する知見を総説としてまとめた (Li et al., Cavities and excited states in proteins, Subcell Biochem. 72, 237-57, 2015; Li et al., Application of high pressure NMR in the study of protein structure and dynamics, Chinese Journal of Magnetic Resonance, 33, 1-26, 2016).
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