研究課題/領域番号 |
15K07024
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
鎌足 雄司 岐阜大学, 生命科学総合研究支援センター, 助教 (70342772)
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研究分担者 |
織田 昌幸 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (20318231)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | タンパク質 / 抗体 / 抗原認識機構 / 揺らぎ / 準安定状態 / NMR |
研究実績の概要 |
我々は、多くの免疫学の教科書に載っている「一つの抗体は一つの抗原を認識する」という概念から外れ、「複数の抗原を特異的に認識する」ことのできる抗体G2を発見した(Kamatari et al., Protein Sci. 23, 1050-1059, 2014)。本研究は、このG2の抗原認識機構を構造生物学や生物物理的な立場から解明することである。 本年度は、G2の認識する3つめのタンパク質SEPT3の中のエピトープ配列(Pep395)を同定した。この配列は、免疫源のトリプリオン蛋白質(ChPrP)中のエピトープ(Pep18mer)とも、G2の認識するもう一つのタンパク質ATP6V1C1中のエピトープ(Pep8)とも大きく異なっていた。3つの全く異なる配列を強く認識できる抗体の報告は初めてである。また、NMRの結合実験より、フリーのG2の構造は比較的フレキシブルであり、これが複合体を作ることにより揺らぎの抑えられた一つの構造に収束することを見いだした。さらに、異なる抗原ペプチドを結合したG2の構造はそれぞれ異なることを示した。これらの情報に基づき我々は、タンパク質の構造揺らぎが、異なる3つの準安定構造を可能とし、それぞれが異なる抗原を認識しうるというモデルを提唱した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
G2の認識する3つめのエピトープ配列(Pep395)を同定し、3つの全く異なる配列を強く認識できる抗体を初めて見いだしたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後、下記の項目の研究を進めていく予定である。1. 抗体G2のscFvの収率の改善、2. 抗体G2と抗原の複合体の構造解析、3. 高圧NMR法を用いた広い構造空間の探索、4. NMR緩和法を用いた準安定状態の構造解析、5. タンパク質の柔軟な分子認識機構の理解。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の必要な物品等を購入した結果、差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の消耗品の購入に使用する。
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