研究課題/領域番号 |
15K07025
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
辰巳 仁史 金沢工業大学, バイオ・化学部, 教授 (20171720)
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研究分担者 |
早川 公英 名古屋大学, 医学系研究科, 特任講師 (60467280)
飯田 秀利 東京学芸大学, 教育学部, 名誉教授 (70124435)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | AIP1 / アクチン / コフィリン / 一分子 / イメージング / キネティクス / 切断 / 張力 |
研究実績の概要 |
細胞の移動や形づくりに、そして細胞の力刺激に対する応答において、アクチン線維の分解とそれにつづく再重合が必須であることが知られている。アクチン線維の分解にはコフィリンに加えてAIP1が重要な役割を持つと推定されているが、その役割や仕組みは不明な点が多い。本研究では、アクチン線維、AIP1、コフィリンを蛍光ラベルし一分子可視化する。ライブイメージングにより、AIP1一分子がコフィリンの結合したアクチン線維に結合し、アクチンの切断を促進していることを示しAIP1のアクチン線維切断における役割と仕組みを明らかにする。また、AIP1のアクチン線維切断促進作用はアクチン線維の張力により抑制される可能性を検討し、張力依存的に進行する活発なアクチン線維の切断においてAIP1が中心的な役割を持つことを明らかにする。 アクチン線維、AIP1、コフィリンを蛍光ラベルし、近接場蛍光顕微鏡(TIRF)でイメージングすることで、アクチン線維一本とAIP1一分子を可視化する。AIP1一分子がコフィリンを結合したアクチン線維一本に結合し、その後、アクチン線維が切断されることを画像として捉える。このデータからAIP1一分子(あるいは複数分子)がコフィリンによる切断を促進していることを示す。また切断の後のAIP1の振る舞いを分析することで、切断後アクチン線維の切断端にAIP1が結合する可能性を検討する。コフィリン単独によるアクチン線維の切断、およびAIP1単独のアクチン線維の切断と上記(コフィリンとAIP1同時作用)の切断を比較することで、コフィリンによる切断はおそらく時間が掛かり、AIP1単独ではアクチン線維への結合が起きても切断が起きず、コフィリンとAIP1が同時にアクチン線維に結合し作用するとアクチン線維の切断を促進することを一分子レベルで確かめる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アクチン線維、AIP1、コフィリンを蛍光ラベルし、近接場蛍光顕微鏡(TIRF)でイメージングすることで、アクチン線維一本とAIP1一分子を可視化する。その画像を低ノイズCCDカメラでタイムラプス撮影した。その画像から、AIP1一分子がコフィリンを結合したアクチン線維一本に結合し、その後、アクチン線維が切断されることを画像として捉えることができた。このデータからAIP1一分子(あるいは複数分子)がコフィリンによる切断を促進していることを示すことができた。また切断の後のAIP1の振る舞いを分析することで、切断後アクチン線維の切断端にAIP1が結合すること確認できた。コフィリン単独によるアクチン線維の切断、およびAIP1単独のアクチン線維の切断と上記(コフィリンとAIP1同時作用)の切断を比較し、コフィリンによる切断は時間が掛かり、AIP1単独ではアクチン線維への結合が起きても切断が起きず、コフィリンとAIP1が同時にアクチン線維に結合し作用するとアクチン線維の切断を促進することを一分子レベルで確かめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
AIP1によるアクチン線維の切断の促進は、酵素反応と類似したキネティクスをとると考えることができる。生化学的には、酵素反応はミカエリスメンテン型の反応として理解されているが、一分子レベルでミカエリスメンテン反応を調べた研究は一例のみで反応を部分的に調べたものである(Lu, et al., 1998, Science)。本研究では一分子ミカエリスメンテン反応の仮説をAIP1の結合時間、切断までの時間、および結合するが切断しない場合の時間を調べ、AIP1の作用のキネティクスの全容を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究は順調に進捗している。論文掲載費用を計上したが、論文の査読者とのやり取りがつづいており、掲載費用は翌年に持ち越すことが予想されるためである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度には、掲載費用として支出予定である。
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