1.ヘリオバクテリア光合成反応中心とPshB(FA/FBタンパク)の再構成実験: PshBタンパクの候補遺伝子にはfd1、fd2以外にfd3がある。前年度はFd1、Fd2 を用いた各再構成系において [FA/FB]-とP800+との電荷再結合に由来する成分(t1/2 = 130 ms)を確認した。本年度はさらにfd3をクローニングし、大量発現・精製後、コアタンパクとの再構成実験を行い、Fd1、Fd2と同様に電荷再結合に由来する成分を観察した。このことはFd3もPshBサブユニットとして機能する可能性を示唆する。さらにコアタンパクとの相互作用部位を架橋実験により特定するためにFd1、Fd2 、Fd3のN末端にHisタグを付加させたコンストラクトも作成した。 2.ヘリオバクテリア反応中心の結晶化・構造解析:一昨年度より回折実験可能な回折強度データが得られており、さらなる分解能向上を目指し、諸条件の再検討、および精密化を行っている。昨年(2017年)、米国のグループがヘリオバクテリア反応中心の立体構造を報告したが、そこにはキノンは存在していなかった。解析中の我々のデータはキノンの存在を示唆しており、電子移動経路上の機能について疑問を投げかけるに至っている。 3.ヘリオバクテリア配向膜におけるP800+MQ-に由来する光誘導電子スピン分極信号:時間分解ESRで観察されるスピン分極信号は、前駆体ラジカルペアからの電子移動が遅い場合には前駆体ラジカルペアに由来するスピン分極からの影響を受ける。この影響の程度を考慮し、本来のP800+MQ-に由来するスピン分極信号をsimulationにより求めた。その結果、J値は|D|値とほぼ同じ大きさであるが、負の符号をもつことが分かった。光化学系1反応中心のキノンA1の配向と似ているものの、わずかに異なった場所に結合していることが示唆される。
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