動物細胞や酵母では細胞質分裂は分裂位置赤道部に形成される収縮環と呼ばれる構造の収縮によっておこる。収縮環はアクチンフィラメントとミオシンフィラメントからなり、それらの相互作用により収縮することはすでに証明してきた。今回は以下の3つのシステムについて、収縮環の形成機構の研究を行った。まず、分裂酵母を用いて、アクチン脱重合因子Adf1が1)収縮環形成に必要なアクチン分子を、間期にエンドサイトーシスに働くアクチンパッチを壊すことによって補給すること、2)このアクチン分子が細胞中央部に運ばれた後、核分裂後期の数分間にこれらを収縮環構造へと再編成すること、3)再編成された収縮環が収縮前から収縮初期にかけて安定化する過程にも働くことを、明らかにした。次にヒト培養細胞HeLaを用い、1)分裂初期に分裂装置微小管の刺激により分裂位置表層でアクチン重合促進因子mDia2が集合すること、2)その部位からアクチンが放射状に重合すること、3)アクチンがミオシンフィラメントの働きによって収縮環へと束ねられること、4)ミオシンフィラメントの配列は収縮環に平行になること、を明らかにした。また、アフリカツメガエル卵母細胞の単離細胞質を脂質膜に閉じ込めて小胞を作り、1)この人工小胞中でアクチンの中央部への流れがおこること、2)同時に脂質膜の成分が内部に取り込まれて中央部に蓄積すること、3)アクチンの流れは脂質膜付近での重合と細胞質中央での脱重合によっておこっていること、4)この流れをミオシンフィラメントが制御していること、を明らかにした。5)同様の研究を分裂酵母の単離細胞質によっても行い、細胞質中でアクチンが重合して繊維束をつくること、その一部は細胞質の大きさが細胞のサイズに近いときに収縮環状のリング構造を作ることを発見した。
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